研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -083/135page

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2 事後調査結果について
 円の単元を通して継続的に実践した結果,各要素の変化の様子を図6(事後調査結果・評定尺度II)に示す。
図6 事後調査結果・評定尺度II
   図6 事後調査結果・評定尺度II

 2−(1)で設定した情報活用能力育成のポイントの6要素について,平均の差の検定を行った結果を図7に示す。この結果当初の目的とした6要素について,男子では,「情報の主体的収集」について,10%の有意水準で変化が認められた。また,女子は,「情報の主体的な処理」に10%の有意水準で変化が認められた。「基本的操作能力」については,確率1%の有意水準で変化が認められ,高度に有意性があるという結果が得られ,手だての効果が顕著に現れた。
 これらのことから,既得の学習情報を有効に活用して,課題解決に当たることが,処理能力の向上につながるものと考えられる。情報の創造の要素については,より高度な思考活動を伴うため,短期間で有意性のある変化・向上を図るには,やや難しい面がみられる。コンピュータシミュレーションによる動的な操作は,生徒が意欲的に情報を収集・処理するのに効果的であった。
育 成 要 素 男     子 女     子

t

p

t

p

A ・ 収 集 +1.778 +0.713  
B ・ 選 択 +1.572   +1.240  
C ・ 処 理 +1.688   +1.796  +
D ・ 創 造 +0.643   +0.613  
E ・ 伝 達 +0.156   +0.885  
L ・ 操 作 +0.429   +3.068 **
P<.01 ** P<.05 *. P<.10 +
   図−7 6要素の平均の差の検定

(2)研究の成果と今後の課題
1 研究の成果
 授業の中で,ドリル型CAIやコンピュータシミュレーションなど,コンピュータを操作して,学習する機会をできるだけ多くした結果,特に事前調査で操作の機会が少ないと思われた女子は,実際の操作を体験することによって,「情報機器の基本的な操作能力」の要素が大きく向上した。このように,女子の機器の操作能力に関して,大きなプラス変容がみられたことが,本研究の大きな成果であった。
 生徒の感想にあるように,生徒一人一人がこの授業に対し,活発な活動を展開し普段とは違った形での授業に対する意欲をみせ,充実感,満足感を持ってくれたようである。
 また,個人差はあるにせよ,授業の実践が生徒たちのコンピュータを使った情報処理活動に対する意識を大きく変えることになり,コンピュータリテラシーを高めることができた。
2 今後の課題
 今後の課題としては,数学科における「情報活用能力」の分析及びその明確化と生徒に対する意識化を強化する必要がある。また,評価が低くとどまっている要素については,更に有効な手だてを検討しなければならない。他にも,コンピュータ等の情報機器を使って授業を実施するための環境の整備などの課題が上げられる。それは「ハードウェアの整備とよりよいソフトウエアの開発やその供給」であり,「教師が情報機器の操作に熟知することや,それらを活用した授業に習熟すること」である。
 この生徒たちがやがて社会の中枢を担うとき,確実にかかわりを持つと思われる情報機器に対し,自ら進んで取り組ませるように心がけたい。

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