研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -095/135page

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肯定的で前向きなもの(3.6)へと変容した。
2 J基礎について
 コンピュータの仕組みや動作の理解について,それまでコンピュータに直接触れることのなかった生徒は説明がほとんどできない(事前1.9)と答えていた。しかし,研究授業で映像等を通して学び,さらにプログラムの流れ図を作成する等の学習を行うことにより,説明が少しできるようになってきた。事後調査の結果3.0と変容した。
3 K特徴について
 以前から,テレビなどによりコンピュータの特徴は漠然とではあるが理解していたようである(事前2.4)。今回16ミリ映画やVTR等を活用し学習したことで更に理解が深まり(事後3.2),再確認できた。
4 評価平均が低かった生徒について
 事前調査での評価平均が低かった4名の生徒は,パソコンの実習のとき,友人と1対1で相談し合うなど意欲的に学習活動ができ,授業で与えた学習課題をすべて終了し,パソコンも自由に使えるようになった。その結果,自信を強めることになり事前調査で低かったJ基礎,K特徴,L操作では全部3以上と評価できるようになった。
図4 下位生徒の評定尺度IIの変容
   図4 下位生徒の評定尺度IIの変容

5 全体として
 技術を習得しようとして工業高校に入学してきた生徒であるから,まだ1年生といっても機械の原理・構造そして操作には興味・関心が高い。そのため,ハードウエア関連の「情報手段の理解と操作能力」(K特徴,J基礎,L操作)で評価が高まり,0.8から1.1への変容を示した。
 事後調査で評定尺度TとIIを比較すると教師の評価と生徒の評価にはほとんど差がなかった。最大の差がでたのはG影響の0.3で,次がF特質の0.2である。

(2)研究の成果
 生徒が自信をもってパソコンを操作できるようになったことで,次のような変化が見られた。
1 放課後にパソコンを使用したいと希望する生徒が多く出た。
2 コンピュータについて理解や評価が深まり,コンピュータに対する抵抗感をもたなくなってきた。
3 始業時間前に全員パソコンに向かい,コンピュータの授業に楽しみをもつようになった。
4 低く評価した生徒は,性格検査や日常の学校生括で消極的な生徒として見ることが多かったが,パソコンを操作しているときはコンピュータに引き込まれ,それまでになく活発に学習していた。情報に関する学習では積極的であった。
 また,次のような情報活用能力の高まりを確認できた。
1 情報を活用することで自分たちの学習や生活にどういう効果が得られるか具体的に考えられるようになってきた。
2 コンピュータを有効な道具の一つとして,主体的に活用してみようとする姿勢が芽生えてきた。
 コンピュータの操作ができると評価したことは,未来の技術者として自分自身を前向きに考えられるようになったからであり,「情報化社会の認識と情報モラルの確立」も高く評価できたことは,高度情報社会に向かって自信を深めることができたからと考えられる。
 評定尺度IIの事後調査で各要素の得点平均値は,事前調査と比べて一段と上回った。低いJ基礎,K特徴,L操作を向上させる手だては十分効果があり,成果が得られたといえる。
 このように「情報手段の理解と操作能力を高める」ことによって,情報漕用能力が育成でき,工業人として高度情報社会を生き抜くための基礎を培うことができたと考えられる。

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