研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -096/135page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

IV 研究の結果と考察

 昭和63年度から2年間にわたって実践してきた『情報活用能力の育成に関する研究』の主な内容を示すと次のようになる。
 ◎情報活用能力が育成された状態像を想定し,これを評価する評定尺度I及びIIを作成する。
 ◎情報活用能力の育成プロセスを作成し,授業などで実践する。
 ◎評定尺度による事前,事後調査の評価から研究成果を確認する。
 研究第1年次は理論構築とそれに基づく授業を試行し,研究第2年次は更に多くの研究協力校(小・中・高校各2校)を依頼し実践研究を進めてきた。

1 評定尺度による評価の結果と考察 (1)小学校の実践
 実践に先立ち評定尺度I・IIによる事前調査を実施した。評定尺度IIの評価は次のとおりである。
 ア A収集,B選択,C処理,D創造,E伝達が他の要素に比べて低い。
 イ G影響,K特徴,L操作は評定尺度Tに比べて高い。
 イの評価が高かった理由は,多くの児童がファミコン等ゲーム用パソコンを利用していること,小学生は情報による影響を深く理解するまでに至っていないことなどが考えられる。
 この調査を基に作成した育成プロセスにそって6年生(算数)と5年生(社会)で検証授業を実施した。
1 6年生(算数)ではA収集,B選択,C処理を重点に,更にK特徴,L操作を育成することを目指して検証授業を行った。その結果
 ア A収集,B選択,K特徴,L操作が向上した。
 イ C処理がわずかに低下した。
 イの低下した理由は,自分の資料をまとめさせたりグラフの作り方を工夫させたりしたため,事後調査では慎重に評価したと考えられる。また,12要素のうち,11要素が向上した。
2 5年生(社会)ではA収集,B選択,C処理,D創造,E伝達が低いため,これらの要素を育成することを目指して検証授業を行った。その結果,これらの要素はわずかであるが向上した。また,12要素のうち,10要素が向上した。
 図1は1,2の結果を総合したものであるが,各要素ごとの変容を見ると,中でもL操作の向上が大きかった。
図1 小学校の総合評価(評定尺度II)
  図1 小学校の総合評価(評定尺度II)

3 学力と評価(評定尺度II)の関係を調べたところ,6年生(算数)では学力下位グループの向上が大きく,5年生(社会)では学力上位グループの向上が大きくなる傾向が見られた。この違いは,パソコン利用経験の違いによるものと思われる。(実践した5年生児童は2年半のパソコン経験があるが6年生児童の経験は浅い)パソコン利用初期の段階では学力下位グループがパソコンにより強い関心を持ったためと考えられる。この傾向は第1年次の実践でも確認されている。

(2)中学校の実践
 実践に先立ち評定尺度I・IIの事前調査を実施した。評定尺度IIの評価は次のとおりである。
 ア A収集,B選択,C処理,D創造,E伝達が全体的に低い。
 イ 小学生よりG影響,K特徴,L操作が低い。
 中学生は各要素を小学生より冷静に評価する傾向が見られ,自己の理解がかなり進んでいるものと考えられる。これらの調査結果を基に,育成プロセスを作成し,3年生(数学)と3年生(社会)

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。