研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -129/135page

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 事例5


       「バイク無免許運転」が予測される高校1年生への予防的な指導援助
            〜相互支持的で互いに励み合う学級づくりを通して〜

(指導援助者は学級担任,29歳,男性,国語担当)



1 予測される問題行動  バイク無免許運転

2 対 象   高等学校1年生 男子(M男)

3 問題行動を予測するまでの経過

  学年の取り組み
 A高校は,A市は郊外にある実業高校である。
生徒の学習意欲は必ずしも高くなく,問題行動も多い。大半の生徒は就職希望であり,一部の生徒のみが進学する。
 学年会で,学年担当者間の目標の一つとして,「生徒理解の上に立つ指導」を掲げたのも,こうした実態を踏まえてのことだった。
 担任は,特に「予防的な指導援助」のあり方を自分自身の課題と意識して指導にあたることにした。どうしても,問題が起きてから指導することが多く,これまで未然に防ぐことができなかった反省からである。
 4月,入学式の直後から,「指導要録」「家庭環境調査票」等を念入りに点検し,生徒理解を図った。
 4月末,YG性格検査を実施したが,担任は,一つのサンプルとして,自分のクラスである1年D組の因子分析をしてみた。A高生の意識の一端がそこに表れているように思われたからである。
 分析してみると,抑うつ感,劣等感などが非常に高い。また,系統別の判定では,不安定で,消極的な傾向が表わている。これらは,今後の学級づくりに際して,参考になるものと考えられた。
 学年の指導体制として,定期的な個別面接,必要に応じての家庭訪問,校舎内外のチャンス相談をかねた巡回指導を強化することにした。補導的な意味の巡回ではなく,生徒との「ふれあい」と理解のための巡回指導である。
 また,5月に「中学校訪問」を実施し,10月には,教科担当者・生徒指導部と,学年担当者による「学年懇談会」を持つなど,多角的な生徒理解を図ろうと考えた。毎週,担任が持ちまわりで発行する「学年だより」などを通して,担任と生徒の理解を一層すすめたいと考えた。
  気になる生徒
 4月当初から,生徒の遅刻・欠席について特に重点的な指導をしたこともあり,5月まで,クラス内の遅刻・欠席・早退ゼロの状態が続いた。3年次の就職試験との関連から自覚を促したことと,学年の朝の登校指導が効果的だったように思われた。しかし,その一方学校生活への慣れから,生徒たちも少しづつ問題を現わし始めてきていた。
 M男も,そんな気になる生徒の一人だった。
 M男は,A市に隣接するB町から通っている生徒で,最初テニス部に入ったが,5月の連休明けに「両親がやめろと言うから。」と,退部していた。
 その直後の放課後,M男は,一人教室にぽつんとすわっていた。通りかかった担任が声をかけたが,表情は暗く,かたくなな態度だった。
 YG性格検査で見ると,標準的なA型であったが,抑うつ感,劣等感が非常に高かった。
 5月末の「中学校訪問」で,M男の出身中学校を訪問したが,M男は特に目立っ存在ではなかった。その直後,「1学年PTA総会」の折り,M男の母親と会ったが,「バイクに乗りたがって困る。」という言葉が,気になった。
 6月初め,中間考査明けの定期面接で,M男は「学校は,つまらない。自分は,ダメな人間で,両親の言うとおり,見込みがない。」と言う。中間考査の成績は,クラス47人中40番だったが,担任の担当教科である国語に関しては,上位にある。そう言って励ましたが,表情は変らなかった。
 将来の希望をきくと,中学時代からの親友と一

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