研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -034/123page
<図1−1>実践への具体化の方向
実践への方策 各教科の学習における実践への具体化の方向 ○ 一人一人の持っている「よさ」や「その子らしさ」の把握 ・ 児童生徒一人一人の持っている「よさ」を把握するために段階に分けた調査をする。
(1)第一段階の「よさ」の把握 …… 児童生徒の全人的な「よさ」の観点を設けた調査をする。
(2) 第二段階の「よさ」の把握 …… 児童生徒の教科学習における「よさ」の観点を設けた調査をする。○ 「よさ」や「その子らしさ」を生かす視点 ・ 領域,題材に応じて,教材に対する児童生徒の具体的な見方や考え方が表れる資料を準備する。
・ 教材に対する見方や考え方等の「よさ」を学習場面に生かせるような指導の手だてを工夫する。○ 達成度の個人差に応じる指導の在り方 ・ 領域,題材に対する一人一人の達成状況により,個別指導等の個人差に応じた指導の在り方を工夫する。
○ 興味・関心,適性に応じる指導の在り方の工夫 ・ 領域,題材に応じて,学習方法を選択させたり表現方法を選択させたりする。
・ 思考の型,行動特性,表現特性に応じた指導の在り方を工夫する。○ 基礎的・基本的な内容を身につけさせたり自覚させたりする ・ 領域,題材に応じて,その教材でねらう基礎的・基本的な内容を意図的に取り上げ,定着させ,更に発展的に定着の深まりを目指す。 ○ 一人一人の個性を生かしかし,伸ばす ・ 学習内容や学習活動,表現したものなど具体的なものから,観点を設けて自己評価や相互評価などを通して児童生徒一人一人の「よさ」を意識化させていく場を設定する。
・ 意識化された「よさ」を生かす指導を繰り返すことによって,「よさ」を伸ばしていく。<1> 「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の基本型
基礎的・基本的な内容を定着させ,一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を生かし伸ばすことは短時間に可能なことではない。むしろ,良い目で見て変容を期待すべき性格のものと考えられる。したがって,学習指導においては中・長期的な展望に立った継続的な授業実践によって初めて可能になるものと考えられる。
本研究では,意図的,計画的に主題を追究するための指導の展開を《「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の基本型》 として,36ページに示した図1−2のようにとらえた。この一連の指導を展開することにより,基礎的・基本的な内容を身につけさせ,自覚させ,一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を生かし,伸ばすことが可能になると考えた。
そして更に,これらの指導の流れを繰り返し実践することにより,一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を育てることができるものと考えた。
<2> 「よさ」を育てる学習指導の段階
○ 「よさ」の把握
・児童生徒の全人的な「よさ」及び,教科学習における「よさ」を把握する。
・把握した「よさ」を「個人カルテ」に記録する。この「個人カルテ」は,児童生徒一人一人についての「よさ」の把握,生かす,意識化の各段階を通して,その記録を累積しておくものである。
「個人カルテ」は,単元の展開にそって児童生徒一人一人の必要な動きが見えるものであり,かつ精選された内容であることが要求される。
○ 「よさ」を生かす