研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -037/123page
2 小学校算数科における実践研究
1.算数科における研究の仮説
(1) 「基礎的・基本的な内容」,「よさ」とのかかわり
小学校算数科の実践において,基礎的・基本的な内容は学習指導要領に示されている各学年の目標及び内容ととらえた。その内容を児童自身が納得し,成就感が持てる学習を通して,定着させていくことが必要であると考えた。
児童が課題を解決するにあたっては,既習事項を生かして考えたり,あるいは生活経験などから解決の糸口を見つけて追求したりする。そこには,その子の見通しや,思考,解決方法などが自分なりの考えとして色濃く反映されてくる。それらの課題解決の過程で表れてくる,児童一人一人の多様な考えを「よさ」ととらえた。
本研究では,基礎的・基本的な内容の定着を図る過程において,児童一人一人の持つ「よさ」が生かされ検討,吟味されるような学習活動を展開していく。その過程でジェクタビリティが刺激され,それぞれが相互に作用し合い,基礎的・基本的な内容が定着するとともに個性の伸長も図られるものと考えた。
(2) 研究の仮説
算数科学習指導において,児童一人一人の持っている「よさ」を把握し,学習内容とのかかわりから児童の個人差に応じて,課題解決の過程で表れてくる児童一人一人の数理的な処理の仕方を生かす授業の在り方を工夫すれば,基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに,一人一人の「よさ」を生かし伸ばすことができるであろう。 《仮説について》
○ 児童一人一人の持つ「よさ」の把握
児童の性格・行動等にかかわる調査,学習形態学習活動等の学習全般にかかわる調査,算数科学習に対する興味・関心の調査を事前に実施し,児童の持つ「よさ」をとらえる。また,授業においては,課題解決過程で表れてくる,児童一人一人の「よさ」を把握する。
○ 児童の個人差に応じる
算数科学習において,顕著に現れる達成度や学習速度に応じる工夫をする。練習問題を解く場面や学習内容の適応場面においては,多様な練習活動を位置づける。速やかに理解できる児童に対しては,発展的問題に取り組ませ,着実な理解が求められる児童に対しては,基礎的・基本的な内容の問題にじっくり取り組ませるようにする。また,学習形態の最適化を図り,個別指導の場と機会を適切に設定し個人差に応じた指導にあたる。
○ 課題解決の過程で表れてくる児童一人一人の数理的な処理の仕方
課題解決の過程で表れてくる児童一人一人の考え方を集団解決の場に持ちだし,数理的にとらえることや考察することを通して,よりよい考えに練り上げていく。その際に教師からよりよい数理的な処理の仕方を示されるのではなく,児童一人一人の考えを検討,吟味していく中で児童の考えが生かされていく。
○ 授業の在り方の工夫
・興味・関心を高める工夫
生活経験や学習経験が十分に活用できるような教材を開発して,児童一人一人の「よさ」が発揮できるようにする。その際,基礎的・基本的な内容を学習する必然性を感じとらせることを十分に考慮し,児童自身が楽しく具体的なめあてを持って取り組めるような教材の配列を工夫していく。更に,発見した数理を定着させ,発展させるためにゲーム感覚を取り入れた練習活動の場を設定しておく。
・指導計画の工夫
教材に接して高まった児童の興味・関心や追求意欲を持続させ,発展させていくような単元の流