研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -038/123page
れを構成していく。それには,1単位時間をまとまりとして細かい活動を設けた展開としないで単元全体の流れの中に,児童が柔軟にゆとりを持って学習に取り組めるような場を設定した計画にしていく。その場において自分なりの思考や方法,自分なりの学習速度で課題を追求していけるよう配慮する。
・ 課題設定の工夫
単元全体を通して学習していく教材に働きかける時間をはじめに十分にとり,児童一人一人の多様で多面的な数理的な処理や試行を通して,学習のねらいを明確にしたり学習内容を焦点化したりさせる。そのような課題設定の活動を通して児童一人一人のめあてを具体的に,しかも必要感を持ってとらえさせる。
・ 課題解決の工夫
この段階では,自力解決を重視して自分なりの数理的な処理をしっかり持たせるようにする。自分なりの数理的な処理は,能率の悪い考えであったりかたよったりした考えであっても,かけがえのない一人一人の「よさ」に裏づけされた試行なのである。次の段階では,自分なりの考えを持ちより,それを検討,吟味していく。ここでは,ペア学習,グループ学習等,学習形態の最適化を配慮し,数理的な処理の仕方を話し合わせる。この話し合いを通して友達と考えを比較することができる。そこで自分の考えが明確になったり,友達の考えとの違いに気づいたりすると考える。これは,より高い数理的な処理のよさを学習していく際の基盤となるものと考える。
最後の段階では,自分なりの試行,友達との話し合いを通して明確になった視点から,よりよい数理的な処理を検討,吟味していくことができるようにする。
以上の三つの段階を密に構成し関連させることを通して,納得し成就感を持った学習ができるようになる。
○ 基礎的・基本的な内容を身につけさせる
課題解決における三つの段階をふまえた学習,達成度や学習速度に応じた多様な練習活動,学習内容を生かした発展課題の作成や解決など,単元全体を通して行われる様々な活動により基礎的・基本的な内容を身につけさせることができる。
○ 一人一人の「よさ」を生かし,伸ばす
事前の調査や学習指導で把握した児童一人一人の「よさ」を生かしながら,学習内容と活動の面から児童一人一人の持つ「よさ」を意識化させるような場を設定する。そして,自己評価,相互評価,教師からの評価を通して自分の「よさ」を意識化させる。更に,意識化された「よさ」を生かせるような学習活動を位置づける。
これらの「よさ」を生かす学習指導を繰り返すことにより,児童一人一人の持つ「よさ」が伸ばされるものと考える。