研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -042/123page

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(3) 「よさ」を生かす指導

 算数科学習においては,一般に1単位時間の細切れの学習による授業が多い傾向が見られる。それでは時間的なゆとりがないために,児童一人一人の「よさ」や考え方の違いを,授業に生かすことがしにくいと考える。
 そのような反省に立ち,「よさ」が生かされるような授業の在り方の工夫を心がけた。それは,興味・関心を高める工夫,ゆとりある指導計画の工夫,興味を持続させる課題設定の工夫,練り上げを大切にする課題解決の工夫である。また,算数科学習において特に顕著に現れる達成度や学習速度に応じる工夫も大切と考える。

<1> 単元全体を通して解決する課題を持った「角の大きさ」の授業

ア 「宝島の宝をさがす」具体的で楽しいめあてを持った課題の設定

 「宝のありかをさがそう」という大きな課題を児童に投げかけ,次のペ−ジに示した宝のありかのルートを書いた地図を渡し取り組ませた。この課題は,ルートを写しとり宝のありかを捜すわであるが,未習事項を含んでいるためなかなかたどり着かない。どうすればたどり着くことができるのか。良さは測れるが,角度をうまく測ることができない。このような試行錯誤を中心とする操作活動を通して児童は角度を学習することの必要性がわかるだろう。そこで,児童は角度を測ったり,かいたりする事の必然性を感じて学習に取り組むことだろう。角度を測ったり,かいたりできるようになったところで,再びこの課題に挑戦する。そして,できた喜びを味わう。更に,発展的な内容として問題作りに取り組み,その問題を解き合う。このような単元全体を通して解決する大きな課題が「宝島の課題」である。

 下の観察表は,この課題に取り組んだN男の活動の様子である。大変苦労して課題に取り組み,ゴールできなかったが,「おもしろくてもっとやりたい」と意欲を示している様子がうかがえる。

観察表 (第1時 めあて:宝のありかを見つけよう。)

観察の視点

児童の活動の様子

I男

○宝島の地図を見ての児童の様子。


○宝島の地図に宝のありかのルートを写し取るのに,何を用いて,どのように解決を図ったか。


○グループでの活用の様子。





○観点を決めてカードに書かせる
ア.宝島の問題はどうでしたか。
イ.算数コーナーはどうでしたか。
ウ.グループ学習は,どうでしたか。
エ.感想
オ.相互評価
・じっと見つめる。
・三角定規を用いて,スタートから何cmかを図る。角度は測っていない。海の上にでる。三角定規がずれており,スタートの線に直角になっていない。
・ヒントカードの提示に対し,マイペースで作業を続ける。
・ヒントカード(三角定規の角と同じところはありませんか。)をとり,自分のかいた線と合わせているが,勝手がわからず回りを見る。T男を見に席を立つ。自分のを見て考えている。最後を測り直す。・No.4の角度が三角定規で測れない。他の人を見る。
・三角定規を二つ合わせるが角が合わない。隣と話しながら作業をするが,解決方法が見つからない。
・答えを合わせにくい。2番目。……ずれている。
・全部消して始めからやり直す。「ありかは,わかったぞ。」
・定規,三角定規を使用。解決のヒントは得た様子。先生の話し中も作業を続ける。No.3より進まず。
・黒板の「定規」のところに自分のネームプレートを移動する。机を動かす。早く座って,作業を進める。
・男一人の班になる。班の話合いに参加。……代表はすぐ決まる。
・マイペースで作業を進める。「わかったもんねえ。おれ。」定規だけで作業を進める。「ちゃんと渡っているよ。橋」「2個の橋渡った。」底なし沼を渡る「できた。」‥‥‥山の中腹……違う(角度が違う。)(無理して「ありか」に合わしている。)
・遅れて「カード」を出す。
ア.むずかしかった。
イ.テープを使った。
ウ.おもしろかった
エ.おもしろくてもっとやりたい。
オ.ちゃんとはしをわたってすらすらいけたのがじょうずでした。
(Y子より)

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