研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -047/123page
4.算数科における分析と考察
(1) 「よさ」の把握について
「小数」の学習で用いた個人カルテを分析すると,自分の「よさ」を記載しながら学習に取り組んだ児童は,単元全体を通して40%弱であった。自分の「よさ」である「よく考えてやるところ」を把握し,意識したS子は,最後には「本気で考えて問題を解いたので○(二重丸)です。」と自己評価している。これらのことから,「よさ」は教師だけでなく,児童自身が把握し,意識していくことが大切であることがわかった。
一方,単元を通して「よさ」の意識化が更に深化されるものと期待したが,記載された内容からは,期待通りの伸びは見られなかった。段階的にきめ細かな「よさ」の意識化を図る手だての必要性を感じた。
(2) 「よさ」を生かす指導について
<1> 単元全体を通して解決する課題を持った「角の大きさ」の授業について
ア 「宝島の宝をさがす」具体的で楽しいめあてを持った課題の設定
個人カルテの自己評価の欄を集計してみると,下のグラフのようになった。問題の内容について難しいと感じていた児童84%の多くは,学習活動を反対におもしろかったと答えている。このことから,問題の内容は難しかったけれど,課題に生き生き取り組み,学習がおもしろかったという児童の姿をうかがうことができる。また,このような児童の姿から,知的な面からの興味・関心に支えられ,課題を乗り越えようと熱中する児童の姿勢が見て取れる。このように学習課題が,具体的で楽しく,基礎的・基本的な内容を学習する必要感を十分に内包していたといえる。
イ 「角度を測る」基礎技能を習熟させるための練習活動の設定
4,5時間日の自己評価の時に「宝島の宝にたどりつきそうですか」という項目を入れた。たどりつきそうだと書いた児童が,4時間目71%,5時間目78%であった。これは,分度器の扱いに慣れ,基礎的・基本的な学習内容の定着が図られるにしたがい,宝島の課題解決に自信を深めていったものと考える。それは,児童一人一人の学習進度に合わせて,異なる内容のプリントが用意されていたので,児童は大変意欲的に取り組み,教師は多くの児童の個別指導にあたることができ,基礎技能を習熟させることができたためであると考える。
ウ 基礎的・基本的な内容と基礎技能をもとにした「宝島の課題」への再挑戦
課題への再挑戦は,とても集中して取り組んだ。課題解決にあたっては,43ページのY子の地図からもわかるように,多くの児童がルートの一つ一つの長さや角度を測っていた。多くの児童が全てルートを写し終えてから,ゴールを確認していたのに対して,角度がかわるごとにルートを確認しながら進む児童もいた。基礎的・基本的な内容を身につける過程は,全ての児童が同一歩調で進められると思われがちであるが,児童によってやり方がいろいろあり,ただ練習を繰り返すだけでなく,その児童のやりやすいようにしてやることが大切である。そしてゴール後「くろうしたけれど,できてよかった。」「できてうれしい。」等の感想が多く見られた。更に,43ページのY子の感想にもあるように,課題解決に便利な分度器の教具としてのすばらしさを感じさせることもできた。
<2> コース別学習を設定した「小数」の授業について。
ア 援助活動を促し,「よさ」を生かす班活動
次のページの「お手紙カード」は,ある班の例である。この班は,リーダー的役割を果たす理解の速いT男,着実な理解が求められるH男,その中間のE子,K子で構成されている。5時間目の「お手紙カード」からは,教えられる側から,逆