研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -048/123page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

に効果的な取り組みの手順を指摘しているようすがわかる。班活動によって,お互いに援助し合い,それを通して「よさ」を生かすことにつながったといえる。

お手紙カード

イ 個に応じたコース別学習

 末尾の桁数のそろっていないくり上がり,くり下がりのある2口の加減計算を全員の共通問題とし,3口や加滅混合の計算や文章題を深化・発展問題とした。このような具体的な到達段階を違えた目標をあらかじめ設定したことで,その子なりの進度で学習に取り組むことができた。また,班内の相互援助活動もよくみられ,大変落ち着いた雰囲気の中で充実した学習が展開された。ただ,パンダコースを選んだ児童のうち6名は,深化・発展問題をすすめていく見通しがうまく立てられず,最後の課題まで到達できなかった。逆にリスコースを選んだ児童のうち6名は,基礎的・基本的な内容を相互に確認し合いながらすすめたため,多くの課題に取り組むことができた。

 コース別学習においては,児童一人一人に合った,的確な学習計画を立てさせる指導が大切であることを改めて確認できた。

(3) 「よさ」を意識化させる指導について

<1> 成就惑と興味を持続させる自己評価について

 「角の大きさ」の授業では,三つの観点を設け自由記述式とした。多くの児童が「学習のめあて」「数理的なよさ」「学習意欲」に関する三点から的確に授業を振り返り,興味が持続していることをうかがわせた。反面,三つの観点を十分に理解しないままで記述している児童も見られた。以上のことから,カルテの形態と評価観点をしぼり込むことが反省点としてあげられた。

 「小数」の授業においては,観点を一つにしぼり,評価項目を事前に印刷しておいた。このことにより短時間で自己評価できた。また,観点の内容が記載されていたので,単元全体を通しての振り返りをすることにも役だった。また,自分の「よさ」についての自己評価は,前述のように単元全体を通して40%の児童が意識的に書いていた。なかなか自分を客観的に見ることのできない発達段階からすると妥当な結果でないかと考える。

<2> 「よさ」を意識化させる「お手紙カード」の活用について

 「お手紙カード」の活用は,相手の「よさ」を認め,相互に交流し合う学習活動である。初め児童は,とまどっていたが,「よさ」の表われる場を設定したり,カードに観点を明記したりし,慣れるにしたがい,スムーズに書けるようになってきた。次のT男の感想に見られるように,グループ活動において,教えた方も教えられた方も互いに相手の「よさ」を認め,カードを交換し合っていた。このことから,自己評価と相互評価を関連づけて,自らの「よさ」を意識させることが,学習意欲の向上につながっていることがわかる。

 僕が,2週間小数の勉強をして,一番うれしかったのは,お手紙カードでEさんやKさんから,だんだんわかってきてこのごろよくプリントが進むようになったというカードをもらったことです。そして,教える量が3人の中で一番多かったH君からも教えてもらってわかってきたというカードがきました。ばくは,その時がじゅ業の中で一番うれしかったです。
T男

<3> 「よさ」を意識化させるための個人カルテの活用とその集積について

 前述の自己評価と相互評価の「お手紙カード」と教師のコメントを個人カルテとして集積した。教師のコメントは,児童への励ましとなり,自信


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。