研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -049/123page

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をつけさせ,その後の学習活動に意欲的に取り組ませたり,「よさ」を意識させたりするのに役だった。個人カルテには,記録が集積されるに従い,考え方のよさや態度や行動面での「よさ」や友達や教師からの励ましが加わり,多くの視点からの「よさ」が書かれた。個人カルテは,常に児童の手元にあり,多面的に自分の「よさ」を意識化するのに役立った。

(4) 「よさ」を伸ばす指導について

<1> 児童の「自作問題集」による発展学習の場の設定について

 児童によって作られた問題の内容の傾向を見てみると下のグラフのようになった。「角度を測りなさい。」「角度をかきなさい。」「計算しなさい。」などの単純な問題は少なかった。また,「角の大きさ」の学習よりも「小数」の学習の方が,何か工夫して問題を作ろうとする傾向が強くなってきた。児童にとって,既習事項や生活経験を生かしての問題作りは,思考力,創造力,表現力等が刺激され,児童一人一人の「よさ」を表す場として効果的であった。

 問題として不備なものも見られたが,教師から与えられた問題だけに取り組むのではなく,自分たちで問題を作れるということを感じたことは,自分の数理的な処理の仕方をふり返るためにも有効であった。また,発展学習の場の設定は学習内容の定着,発展,応用という点で児童それぞれの力に応じた問題作りができて効果的であった。

「角の大きさ」
グラフ
「小数」

<2> 「自作問題集」の活用による相互交流について

 問題解決にあたっては,大変意欲的に取り組んでいた。採点も厳しく,何度もやり直す場面も見られた。問題に対する感想も次々と貼られ率直な感想が交流された。教室の背面ボードに学級全員の感想を貼る台紙を準備しておいたので,問題に対する批評・感想が貼付,集積され,単元学習の終末にふさわしい充実感が見てとれた。

 E子は下のように感想を書いている。問題を作るだけでなく,解いた相手から感想をもらうことにより満足感を得ている。自分の「よさ」が意識化され,この「よさ」の意識化を繰り返すことにより「よさ」が伸ばされると考える。

 5人の人が,わたしの問題をやってくれました。みんなからもらった手紙には,おもしろかったよ。とか,楽しい問題をよく作ったね。とかが書いてありました。今までこんなほめられた手紙をもらったことがなかったのでとっても,うれしかったです。
E子

(5) 基礎的・基本的な内容の定着について

 事後テストの分析結果を見ると,正答率80%以上を示しているので,基礎的・基本的な内容は,ほぼ定着したと考察できる。ただ,「小数の大小比較」は,問題が複雑であったため,正答率が低くなった。このような結果は,課題解決における三つの段階をふまえた学習,達成度や学習速度に応じた多様な練習活動やコース別学習,学習内容を生かしての問題作りやその解決など,単元全体を通して行われた様々な活動が成因となっていると考える。

角の大きさ

正答率

小数

正答率

直角や1回転と度の関係 96.9 小数のしくみ 78.1
角度の計算 78.1 小数の大小比較 50.0
角度を測る 71.9 数直線を読む 91.7
角度をかく 82.8 小数の加減法計算 83.1
三角形をかく 90.6 応用問題 84.3

(6) ジェクタビリティについて

 児童の学習は次の過程を経て,より深い納得と成就感を得ていくと考える。


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