研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -057/123page

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らしい理由があるのだろう」という予測をたてたりした。(児童は,音楽劇「窓際のトットちゃん」<テープ12話構成>を朝と帰りの会に1話ずつ聞いている。)

 このように資料に表されている事実の構造をおおづかみに把握させた後で,教師は資料を範読していった。その際,組み絵を逐次提示して資料理解を視覚的に補助したり,文章資料を配布して文章から理解させようとしたりした。これは,範読による聴取重視型の資料理解と組み絵による視覚型の資料理解,文章読み取り型の資料理解を児童一人一人が選択できるよう配慮したものである。

写真 1

<2> 絵画的構造的板書

 児童が,資料に表されている問題状況を自分とは無関係のこととして受け止めていたのでは,よりよい価値を求めて本音を出し合う授業とはならない。そこで,問題の成因要素や人間関係などをしっかり把握させ,主人公の悩みや問題を「自分ごと」として考えさせていくために,板書を絵画的構造的に構成しようとした。

 下は「大冒険」の板書事例である。ここでは,トットちゃんの木登りと小児麻痺の泰明ちゃんの木登りの違いを対比させ,トットちゃんの言動の背景を探らせようと意図したのである。

写真 2

<3> 自分の考えを明確にするための道徳シートの活用

 問題状況を把握し,主人公に対する共感が深まってくると,「私ならこうする」というその子らしい判断や心情が高まってくる。本研究では,この自分の考えを持つ段階に,性急に急ぐことなくじっくり自己内対話ができるように書く活動を取り入れた。この自分なりの判断や考えは,自分を見つめ直す際の具体的な視点となる。これを「自分を見つめる視点2]として研究に位置づけた。

 自分の考えが明確になると自分とは違った見方や考え方との比較検討が可能になる。この比較検討を通して,自分らしい見方や考えをより強く意識したり,集団の中での「自分らしさ」を意識したりしていくと考える。

 「すれちがい」の授業では,よし子のとったややいじわるとも思える言動について,あなたはどう思うかという発問で自分の考えをまとめさせた。

 次にその事例を示す。

K子
 わたしは,よし子さんのえり子さんと口もききたくない気持ちが良く分かります。わたしもやくそくを破られたことがあるから強く分かります。

Y子
 わけも聞かずにプンプンするなんてよし子さんて自分勝手です。あやまっているえり子さんが気のどくです。わけを聞いてからでもおそくはないのに。

 よし子を認める立場と認めない立場の際立った例であるが,このように自分の考えを明確にさせた上で意見交流をさせていくのである。

 教師は,児童が道徳シートに自分の考えを整理している間に,机間指導をしながらそれらを把握し,意図的指名の構想や発問を検討していく。教師の授業構想と児童の意識のズレを発見し,柔軟


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