研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -059/123page

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0子……トットちゃんでなければ思いっかない考えです。泰明ちゃんの一番ほしいものをよく知っているのです。それはこの「木のぼり」です。

A男……やす明ちゃんにとって一生で一度のすばらしいプレゼントだと思う。大人はぜったいに思いつかないことだし,思いついてもけっして実行しないだろう。

 4人はお互いの考えを聞き合った後,「トットちゃんのやったことは,とても危険なことだ」というE男の考えを基に,意見を述べ合い始めた。

E男: 泰明ちゃんが脚立から落ちたら,大けがすると思うな。
A男: でも,トットちゃんが木に登らせてあげなくては泰明ちゃんは,一生木登りができなかったでしょ。トットちゃんには思いやりがあったからこんなことをしたんだよ。
0子: トットちゃんのやりかたは無茶なところもあるけど泰明ちゃんを本当に考えてあげていたと思うよ。二人とも本気だったもの。
S子: でもね,E男君の言うように泰明ちゃんが木から落ちたら死んでしまうかもしれないよ

A男: 成功したんだからトットちゃんはいいことをしたと思う。
0子: 二人で力を合わせたからうまくいったんだ。
E男: ぼくもトットちゃんはすばらしいことをしたのは分かるけど,木登りをすることが危険なことは変わらないと思う。

  (以後の話し合い,略)

 この交流では,E男の考えが他の3人の考えにゆさぶりをかけている。このように友だちの考えに触れて,自分の考えを再考するきっかけ作りにさせていきたいのである。

写真 1

<6> 磁石氏名板を利用した推薦指名

 児童が意見交流をしている間,教師は机間指導をしながら交流グループの話題を把握していく。それによって,全体での話し合いで検討させたい。見方や考えがどの程度出ているか押さえておきたいからである。

 「大冒険」の授業で児童は,トットちゃんが泰明ちゃんをトットちゃんの木に登らせたことを,次のように見ている。

○トットちゃんの行動を認められない ………… 6/33
 理由事例:小にまひの子を登らせてけがでもしたらたいへんだ/きけんだ/むちゃだ等
○トットちゃの行動を認める ………… 27/33
 理由事例:一生の思い出になる/信じられないような経験させている/思いやりがある等

 学級の傾向としては,「トットちゃんのはよいことをした」「思いやりのある行動だ」などのトットちゃんの行動を認める方向に大きく傾いている。しかし,教師としては,「小児麻痺の子どもを木に登らせる危険性」についての検討があってこそ「トットちゃんの個性的な言動の奥にある深い思いやり」に触れることができると考えたのである。このような場合,教師の発問や意図的指名により,「ゆさぶり」をかけていくことが多いが,本研究では「推薦指名」を導入した。

 推薦指名とは,

 意見交流で出し合った考えの中で,みんなに聞いもらいたい「その子らしい」見方や考え方を児童相互に推薦し合う方法。推薦したい友だちの磁石氏名板を黒板に貼付する。
 教師は,意図的指名の構想と合わせて「話し合い活動」を組織していく。
※磁石氏名板たて4cm10cmの白いゴム磁石に氏名を記したもの

 これは,意図的指名などの教師側からの働きかけだけでなく,児童側からの働きかけも吸い上げて話し合い活動を活性化していく意図を持つ。教師は,黒坂に貼付された磁石氏名板の児童を効果的な場面で指名し,対立点や矛盾点などをうきば


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