研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -062/123page

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集日の決定に移行する。これを道徳の授業にあてはめると,

○方向づけの問題  中心資料の主人公を取り巻く状況の把握および問題の焦点化を図る方向づけの機能

○評価の問題 意見の交換,解決策を比較検討する評価の機能

○統制の問題 考えを相互に練り合わせる統制の機能

のようになる。

授業の分析では,授業の逐語録を作成し,12のカテゴリーにあてはめて分析していく。以下に「大冒険」の分析プロフィールを示す。

「大冒険」の授業における相互作用位相推移プロフィール
▲「大冒険」の授業における相互作用位相推移プロフィール

 分析によると,「方向づけの機能」は第一の位相で最大になっている。これは本授業に限らず,情報取得の一番顕著な展開前段前半に集中することである。ただ,発言数が多いこととここに充てられた時間(8分14秒。ただし,資料範読から問題状況把握まで)を比較すると密度の濃い状況把握の話し合いが,行われたことがうかがえる。

 また,方向づけが第二位相で低下していることは,状況についての把握がだらだらと授業に食い込んでいないことを意味している。資料の細部にこだわり過ぎたり,思いちがいをして混乱したりすることが少なかったことは,授業記録からも検証できた。これは,先行オーガナイザーと構造的板書が効果的に影響しあった結果と考える。

 これらの「方向づけの機能」についての分析は先行オーガナイザー以後の分析結果である。問題状況がうきぼりになるまでの時間に先行オーガナイザーの時間(2分24秒)を加えて考察すると1時間扱いの授業では,意見交流の時間を確保するため,更に細部を工夫する必要を感じた。

<2> 意見交流の指導

 意見交流では,交流相手に仲の良い友だちを選んでしまうのではないかと心配したが,実践学級の好ましい人間関係に助けられて,対立する考えの友だちや,自分とは違った考えの友だちを交流相手に選ぶ児童が多かった。

○「あなたは交流相手をどのようにして決めていますか」についての分析:「大冒険」の授業後の調査による(自由記述法による)

項目

人数

○ 仲のよい友だちだから

3名

○ 座席表をもとに
  ・ 反対意見だから
  ・ 分らないところがあるから
  ・ じぶんの考えとはちがった意見だから
  ・ 意見は同じでも詳しく聞きたいから
  ・ その他
20名
(4名)
(3名)
(10名)
(1名)
(2名)
○ 話しやすい相手だから 6名
○ 同じ学習班だから 3名
○ なんとなく 1名

 上の分析でも分かるように,児童は交流相手を選ぶ基準として座席表を重視している。これは「自分の考え」を明確にすることで,他の考えと比較する視点を持っことができたからであると考える。価値として深い考えでも,自分の中に深い納得をもって取り入れらなければ,内面的な自覚とはなりにくい。

 また,この意見交流を通して,友だちの意外な面を発見したり,友だちのよい面を尊重し合えたりすることが,人間関係作りに好影響を与えていることは,次のS男の感想からもうかがえる。

S男の感想
 ぼくは,H男君ってすこしらんぼうな感じがしていました。ドッチをしてもつよいし,口のきき方だってぼくにはいやでした。でも,きょうの意見こうりゅうでは「えっ,これがH男君」と思うほどやさい、考えをしていました。「トットちゃんは,やす明ちゃんに一生の思い出をプレゼントしたかった」といいました。ぼくはうんとおもいました。

 「大冒険」の授業では,意見交流が9グループに分かれて行われたため分析用の逐語録が作成できなかった。そのため相互作用過程分析プロフィールには組み込めなかった。しかし,「評価」「統制」のグラフとも上昇していることから,一斉授業にもどっての話し合いが,論点がかみ合い,よりよい方向づけに向かっていることがうかがえた。話し合いが限られた児童によって進められたり,


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