研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -065/123page
4 むすび
1.本年度の研究成果
本年度は,より一層の研究の充実のために,各教科の実践に道徳の時間の実践を加え,「よさ」や「その子らしさ」の把握の仕方の工夫,意識化への有効な手だての工夫,それらを生かす学習指導の在り方と指導形態の工夫を軸にすえて,研究主題に迫ろうとした。
「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の基本型にそって実践研究をすすめた結果,次のような三つの成果を得た。
・ 「よさ」や「その子らしさ」を見る資料を,教師側の資料とするだけでなく,児童生徒自身が自分の「よさ」や「その子らしさ」を意識していく段階で,活用していくことが大切である。
・ 児童生徒の「よさ」を生かしていくためには,単元に基礎的・基本的内容を学習する必然性を設定していくとともに,自分の考えを明確に持たせる場が大切である。
・ 児童生徒は「よさ」が認められ学習の場にとり上げられたときに,成就感と次への学習への意欲が高まってくる。そのためには,教師が「よさ」を生かすという指導だけでなく,児童生徒相互の「よさ」を認め合い,学習へ生かしていく場を保障し構成していくことが大切である。
道徳の時間の実践を行ったことは,これまで各教科の「よさ」のとらえ方を,さらに幅広く多面的に見つめ直してみるのに有効であった。
また,中・長期的展望に立って,多くの実践を行ったことは,「よさ」や「その子らしさ」の変容をきめ細かく,深く理解していくのに役立った。
基礎的・基本的な内容を分析精選して,単元や主題を構成し,そのうえにたって「よさ」や「その子らしさ」を生かす学習指導を展開することで,基礎的・基本的な内容の定着の面でも好結果が得られた。一方,道徳の時間では,基礎的・基本的な内容を,自分自身を見つめ直す窓口として焦点化し,繰り返し実践することにより,調和の取れた道徳的実践力が形成できると考えた。
学習指導の各段階で,ジェクタビリティの刺激を図ってきたが,ジェクタビリティの育成を見極めることは限られた時間の研究では難しいことであった。
2.来年度への研究課題
5年計画の本研究は,来年度まとめをしていく予定である。
これまで,「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の基本型の各段階で,個を生かし,伸ばすために適切な手だてを考え,実践授業を通し,その有効性を確かめてきた。一つ一つの手だては,各教科や道徳の授業改善には効果的であったが,今後は,それらが指導の中で連動し,機能し,よりスムーズに働くよう見直していきたい。
本研究の推進にあたり,ご協力いただいた協力校の先生方に感謝の意を表するとともに,各位のご意見,ご助言を期待する次第である。
<参考文献>
・ 小学校指導書算数編道徳編二(文部省)
・ 算数科の個別化・個性化指導:清水静海編著(明治図書)
・ 個人差に応じる算数の指導(中学年):杉山吉茂他編著(東洋館出版社)
・ 現代教育評価事典:東洋他編著(金子書房)
・ 新教育学大事典:細谷俊夫他編著(第一法規)
・ 道徳教育はこうすればおもしろい:荒木紀幸編著(北大路書房)
<研究協力校及び協力委員>
○ 福島市立鎌田小学校
米 山 フサイ 石 原 俊 一
○ 国見町立藤田小学校
市 川 多 門 佐 藤 喜 夫
<プロジェクト研究メンバー>
佐 藤 英 昭 野 中 定
松 浦 芳 孝 深 澤 陽 一
辺 見 広 一 遠 藤 光
星 和 久 渡 辺 博 志
高 羽 博 樹 荒 井 一 成
佐 藤 吉 則 小 林 正
吉 田 尚 林 宗一郎