研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -069/123page
2.コンピュータ機能の概念規定と機能の分類
コンピュータは他の教育メディアとは違っていろいろな機能を持ち,その用途も広い。本研究では「コンピュータの機能」をツール(道具)として活用する立場からとらえ,これを「学習指導や学習活動を支援するコンピュータのはたらき」と規定した。そして,7つの機能,内容に分類し,その具体例を各教科・科目に応じて示した。
次にコンピュータの機能の分類を示す。
表2−1 コンピュータの機能の分類
機 能
内容
具体例
1.情 報
検 索情報の蓄積・管理
・検索・照合植物・動物・岩石・薬品等の検索
科学史上の人物等の資料検索2.計 算
数値計算の処理等 実験データの計算処理
表計算ソフト等によるデータ処理3.計 測
制 御物理的な量の測定や
各種機器の制御電圧・温度・照度・圧力・時間等の
測定・制御,ランプの点滅制御4.シミュ
レーション変化する事象の模擬
実験的な処理・予測目に見えない現象や時間の長い
現象の模擬実験,天体の運動等5.図 形
作 成処理内容や結果の
グラフィック表示各種グラフの表示・作成
図形の表示・作成等6.文 書
作 成主にワードプロセッサ
としての利用文章・資料等の編集
レポートの作成7.通 信
電話回線等を通した
パソコン間のデータ交換パソコン通信
LAN3.実態調査1・2とその結果
現在,コンピュータの学校への導入が進められているが,コンピュータの導入環境や機能の活用等は日を追って変化しており,コンピュータ等の設置状況やその利用状況等を把握することは,今後の研究をすすめる上で大変重要なものとなっている。そこで,本研究では,次に示すような実態調査1・2を行った。
(1) 実態調査T(平成2年5月実施)
<1> 調査対象
県内のすべての公立学校898校(小学校554校,中学校244校,高校及び特殊教育諸学校100校)。
<2> 調査目的
パソコン等の設置状況とその利用状況に関する実態を把握する(回収率100%)。
<3> 調査結果
「どのような目的で教科指導に活用したか。」という調査結果(資料6)を校種別に見ると,小学校では「学習内容の定着」,「学習の動機づけ」,「学習内容の深化・発展」が多く,「問題解決・論理的思考力の育成」が最も少ない。中学校でも「学習の動機づけ」,「学習内容の定着」は多く,「問題解決・論理的思考力の育成」は小学校と同じように少ない(9%)。また,「コンピュータリテラシーの育成」は25%と,小学校(19%)と比べて多くなっている。高等学校等では「情報処理技術の習得」を目的とする利用が64%と最も多い。次いで,小・中学校と同様に「学習の動機づけ」,「学習内容の定着」が多いが,「生徒の自主的活動を促すため」と「問題解決・論理的思考力の育成」の割合も高くなってきているのが特徴的である。
これらのことから,全般的に「学習結果の定着」,「学習の動機づけ」や「コンピュータリテラシーの育成」等への利用が主で,いわゆる「問題解決活動や創造的活動等のツールとしての活用」があまりなされていないことが分かった(下図)。
(2) 実態調査2(平成2年11月実施)
<1> 調査対象(実態調査1に基づく)
現在パソコンを設置し,授業を行っている学校