研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -070/123page
<2> 調査目的
コンピュータ利用上の問題点を把握するため。
特に,図2−1に示した研究教科(3校種7教科9科目)では,授業でコンピュータ機能(表2−1に示した機能)がどのように利用されているかについても調査した。
<3> 調査結果
コンピュータを用いて授業を実施した学校の割合は,次のようになっている(上位3教科)。
表2−2 コンピュータを用いた授業
1位(%)
2位(%)
3位(%)
小学校 算 数(0.6) 理 科(0.3) 社 会(0.2) 中学校 数 学(1.3) 理 科(0.9) 技術家庭(0.8) 高養校 商 業(33) 理 科(21) 数 学(20) このように,本県では学習指導におけるコンピュータの利用,とりわけ授業への利用は,高校の職業教科以外は,ほんの一部の教師によって行われているのが現状である。
また,「コンピュータのどの機能を授業で活用したか」の調査結果によると,教科の特質によって活用している機能が異なっている。理科では小・中・高の傾向がよく似ており,シミュレーション,計算,図形作成の機能については多く活用されているが,計測機能ははとんど活用されていない。活用機能の教科による違いを活用割合の多い順に1〜3位まで示すと表2−3のようになる。
表2−3 活用機能の教科による違い
教科等 1位(%) 2位(%) 3位(%) 小学校 理科 シミュレ(61) 計 算(17) 図形作成(13) 数学
中学校 理科
技術シミュレ(53)
シミュレ(39)
シミュレ(33)検 索(14)
図形作成(25)
図形作成(25)計 算(14)
検 索(22)
文書作成(14)理科
高校 家庭
商業シミュレ(31)
計 算(40)
計 算(30)計 算(28)
文 書(33)
検 索(24)図形作成(23)
図形作成(14)
文書作成(21)さらに,「学習指導内容とコンピュータ等の機能とを関連づけた年間活用計画等の資料」の調査結果では,資料を持っているのは,コンピュータ活用の授業を実施した学校の約20%であった。その中で商業科(高)は他よりも高く,40%近くを示している。また「持っていないがそのような資料を必要としている」という回答は,持っていない学校の約80%を占めている。
このことからコンピュータの機能について年間の学習指導計画等の中への関連づけは必要と考えているが,授業を実施したことがある学校でさえあまり関連づけされてはいるとはいえない。
4.学習指導内容とコンピュータの機能
コンピュータの授業への利用については従来から種々の試みがなされている。しかし,利用状況を一般的にみると,その試みは,すべて「コンピュータで何がどこまでできるか」を十分認識して行われているとは必ずしも言い切れない。つまり,コンピュータを使う必要もないところまでをコンピュータを使ったり,観察,実験をするべきところをコンピュータの模擬実験で済ませたりという利用がみられた。これは授業へのコンビュー夕の利用が始まってまだ日が浅いことからくる過渡的な現象と考えられる。
コンピュータには従来の教育機器には見られない種々の機能がある。しかし,コンピュータを過大評価せず「他の教材,教具や実験器具とともに一つのツール」と見なし,それぞれの教科・科目の指導内容に応じて,それぞれの機能を十分生かした活用の方法の構築をしていく必要がある。
そこで,今年度はまず上記の教科・科目の指導内容を分析し,どの内容のどの場面に,どのような目的で,コンピュータ特有のどのような機能を活用できるかを各教科研究班別に研究した。さらに,これを基に,各研究対象教科・科目で指導内容とコンピュータの機能との関連表を作成した。
この結果については,それぞれ次ページ以降に述べる。