研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -071/123page
3 学習指導内容とコンピュータ機能との関連
1.小学校 【理科】
(1) 小学校におけるコンピュータの活用
「コンピュータについては,小学校ではそれに慣れ親しませることを基本としており,教科の指導において指導の効果を高める観点から利用したりクラブ活動で利用したりすることが考えられる。」
このことから小学校教育において,情報処理教育やコンピュータ等の活用が正面に据えられるのではなく,小学校教育に課せられた目的達成に向けた学習活動の中に,慣れ親しむような形で取り入れ,日常化していくような活用の仕方が大切であると思われる。
(2) 実態調査の結果について
調査2の結果,小学校理科に関して次のようなことが浮き彫りにされた。
<1> 活用したコンピュータの機能について
活用したコンピュータの機能は,シミュレーション機能が最も多く,64%であった。これは,認識しにくい現象を模擬的に体験させるような使い方が多いことを示している。
<2> コンピュータの活用目的について
コンピュータを活用した目的は,学習内容の定着が最も多く,42%であった。活用したコンピュータの機能の中でシミュレーション機能が多いことと関連して,授業のまとめや理解しにくい現象に対して,シミュレーションで演示して学習内容の理解と定着を図っている状況がうかがえる。
<3> 全体的な考察
コンピュータの導入が進むにつれて,使用台数については,改善されていくと思われるが,コンピュータが持つ機能を生かした活用の方法に関しては,さらに検討し理解を深めていく必要があろう。たしかにシミュレーション機能は,コンピュータの優れた機能であるが,児童の問題解決活動としての道具というよりは,児童の知識理解の補助的手段という性格が強いため,安易に多用すると直接経験の重視という理科指導の大きなねらいからはずれてしまう危険性がある。
そこで活用するコンピュータの機能を学習内容と理科指導で育成すべき能力との関連の中で分析し,コンピュータ活用の最適化のために下記のような研究を進めることにした。
(3) 小学校理科の学習指導におけるコンピュータ活用の基本的な考え方
学習指導要領が改訂され,理科の指導においては,自然に親しみながら観察,実験などの直接経験をこれまで以上に重視し,それらの活動を通して児童の問題解決の意欲や能力を育てていくことが重要なねらいであることが示されている。
このようなことを踏まえ,直接経験の一層の重視という理科指導の方向と整合性を保ちながら,理科の授業の中にコンピュータを取り入れていく視点を次のように考えた。
<1> 児童の問題解決活動の知的ツールとしてコンピュータを活用させ,データの処理,検索,計測といったこれまでの観察,実験で取り入れること