研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -074/123page
2.中学校 【数学】
(1) コンピュータを活用した学習指導
<1> 数学科におけるコンピュータの利用
数学科における学習では,コンピュータの利用の目的として,次のようなことが考えられる。
ア コンピュータの機能を生かした教具として
イ コンピュータを理解するための基礎となる知識の習得のため
ウ 情報活用能力の育成のため
具体的には,アについては,様々な利用の場面が考えられ,提示や表現の困難な図形の移動・切断や大量のデータ処理などにおいて,コンピュータ特有の機能を用いれば,従来にはない効果的な授業の展開が期待される。イについては,2年の「数の表現」で,2進数などの記数法やa×10 n の形の表現を取り上げる。また,2年「不等式」では,計算の手順などを流れ図などに表すことを扱う。ウについては,図形を描いたり,移動・回転したり,また,データ処理をして表やグラフに整理するなどの過程を通し,コンピュータを活用する基礎的な能力を育成する。
本年度は,本研究の趣旨を受けて,特にアのコンピュータの「機能を生かした教具」としての利用について追究する。
<2> コンピュータの活用状況の実態
調査2によると,使用したコンピュータの機能については,シミュレーションが67%と最も多く,次いで,計算(19%),検索(19%),図形作成(11%)などとなっている(表3−2)。
表3−2 使用した機能
機能
検索
計算
計測
シミュ
図形
文書
通信
計
ソフト数
使用数
5
5
2
18
3
1
0
34
27
%
18.5
18.5
7.4
66.7
11.1
3.7
0.0
表3−3 使用学年
%
計
度 数
1学年
51.9
14
++++++++++++++
2学年
25.9
7
+++++++
3学年
22.2
6
++++++
計
100
27
3学年での使用例が極端に少ない(表3−3)ことや問題解決のためのツールとしての利用が少ない(資料7)ことなどから,学習内容とコンピュータの機能との関連が十分に図られているとはいえない。コンピュータの機能をよく理解し,コンピュータの利用を年間指導計画の中に位置づけ,計画的に活用していくことが求められる。
(2) 学習指導内容とコンピュータの機能との関連
コンピュータがどのような機能を持ち,どの場面で効果的なのかを洗いだし,学習内容とコンピュータの機能を関連させてみた。また,上記(1)<1>アの教具としてのコンピュータの活用という観点から,コンピュータ利用の理由を考察した。
<1> 領域とコンピュータの機能との関連数と式の領域では,図形作成機能を用い,ドリル形式で問題提示をしたり,不等式や方程式の解き方においてはシミュレーション機能を用いて,解法の手順の習得を図る。
図形領域は,コンピュータの機能を有機的に活用できる領域である。たとえば,図形作成機能,シミュレーション機能を生かし,図形の移動や切断など,実際に操作困難な内容を扱うことができる。また,三角形の合同条件などでは,条件を変えたり,加えたりした場合の変化を模擬体験(シミュレーション)できる。
数量関係の領域では,第1学年の「比例,反比例」において,関係をグラフに表したり(図形作成),シミュレーション機能を用い,座標の概念を定着させたりする。「関数」においては,対応表を作成したり,グラフ化することにより,その関数の特徴をとらえさせる。また,第2学年の「統計」,第3学年の「標本と母集団」では,大量の資料を整理したり,確率や標本調査では乱数の発生が可能である。さらに,グラフ化により,資料の特徴や相関関係を視覚的にとらえさせることができる。