研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -081/123page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

【物理IB】

(1) 学習指導におけるコンピュータの活用

 実態調査によると物理領域の学習への活用では力学関係での活用が75%を占めている。

 力学関係(放物運動,円運動,データグラフ化等)15件, 
 波動関係(うなり等)2,電磁気関係(等電位線等)3   

 活用目的では,問題解決活動への利用が最も多い(38%)。問題解決活動の重視は物理という科目の特質であり,望ましい方向での活用といえる。

(2) 指導内容とコンピュータの機能との関連

 機能ではシミュレーション機能の活用(36%)が最も多く,検索,文書作成,通信機能は全く活用されていない。しかし下表のように,探究活動においては,研究報告書の作成などで文書機能,科学史上の発明発見の経緯の調査などでは検索機能をそれぞれ生徒が主体的に活用できる場面が設定できる。また,計測機能の活用可能場面が多いが,その円滑な活用を図るのためには適当なセンサー(温度,圧力,光,磁気)の選定と取り扱いの簡便なインターフェースの開発等が課題である。

表3−7
項目 学習内容コンピュータ活用場面 活用の視点※ 活用するコンピュータの機能

(1)

ア 力と運動 「落下の運動」 落下時間・速度・加速度等の計測,計算,グラフ化
          放物運動
3 4
4
   


   
イ 運動量 「運動量と力積」 力積の計測とグラフ化
「運動量の保存」 2物体の衝突・分裂のシミュレーションや実験データ処理
3 4
2 4
 



   
ウ 運動に関する探究 活動 ・重心の測定 ・摩擦係数の測定 ・乗り物の運動の測定
・運動の三法則の実験 ・運動の法則の発見の歴史調べ ・落体の運動の測定
・衝突や分裂の実験 ・はねかえりの係数の測定 ・報告書作成等
5

 
(2)




ア 力学的エネルギー 「力学的エネルギーの保存」 単振り子やばね振り子の速さの測定とグラフ化
                  力学的エネルギーの変化のグラフ化や実験データ処理
2 3
2 3
 

 
   
イ 熱とエネルギー 「熱と温度」 温度の計測やグラフ化および比熱の測定実験の処理
「ボイル・シャルルの法則」 温度,圧力,体積,の計測とグラフ化
2 3
2 3
   
 
   
ウ エネルギーに関する探究活動 ・仕事の原理実験 ・仕事率の測定 ・振り子の運動の測定
・弾性(非弾性)衝突の実験 ・摩擦のある面上での運動測定
・比熱の測定 ・ボイル・シャルルの法則の実験 ・熱の仕事当量の測定
・熱機関の仕組みや発明発展の経緯調べ
5  

(3)

ア 波の性質 「熱の伝わり方」 横波,縦波の伝わり方
           反射の際の位相の変化
「波の干渉・回折」 定常波のでき方
4
4
4
     

     
イ 音波 「音の伝わり方」 ドップラー効果
           音の波形の観測等
           うなりとその周期の測定等
4
3
3
   



     
ウ 光波 「光の干渉・回折」 いろいろな干渉縞のでき方 4            
エ 波動に関する探求活動 ・波のいろいろな伝わり方の作図やシミュレーションによる探求
・音の諸性質の調査 ・ドップラー効果の測定 ・弦や気柱の振動調べ
・共振・共鳴の実験 ・楽器等への応用の探究
・光の速さの測定の歴史調べ ・光の正体の発見の経緯調べ ・屈折率の測定
・レンズによる像のでき方の実験 ・光の波動現象の観察 ・光の波長の測定
・スペクトルの観察 ・簡単な光学機器や玩具の製作 ・報告書作成等
5  
(4)




ア 電界と電流 「電界・電位」 点電荷や導体のまわりの電界・等電位面
「電流回路」  温度と抵抗の計測とグラフ化
         半導体内のホールや電子の動き
         タイオードの電流・電圧特性の計測とグラフ化
「電流と仕事」 熱の仕事当量の実験での計測とグラフ化
4
2 3
4
2 3
2 3
   











   
イ 電子と原子 「電子の電荷と質量」 電界中の電子の運動
              ミリカンの油滴実験
「放射能         α線の散乱実験
4
2 4
4
   

     
ウ 電流と電子に関する探究活動 ・箔検電器の製作 ・等電位面の電気力線の実験 ・コンデンサーに関する実験
・抵抗率の温度変化の実験 ・起電力の測定 ・ダイオードの作用の実験
・電気素量の実験 ・電気素量の発見の経緯調べ ・原子の構造発見の経緯調べ
・放射線の観察,実験 ・放射線の発見の経緯調べ ・報告書作成等
5  

※活用の視点は前ページの視点の番号による。

(3) コンピュータの機能を生かした活用の具体例

 物理では上の関連表でも分かるように,計測機能を活用できる領域が広く,特に,基本量である時間と温度の測定ではその利用度が高い。

 時間については,フォトトランジスタ等の光センサーを利用して通過時間を測り,コンピュータに取り込んで速度や加速度ばかりでなく種々の量の時間的な変化を瞬時にグラフ化できる。

 温度の計測では,細いK熱電対と専用ICを用いると便利である。測定範囲も約−200〜+1000℃と広く,熱容量も小さいので応答が速い。これを8ビットAD変換器等を介してRS232C端子から取り込みグラフ化できる。このようなセンサーと計測機能を生かして,従来の機器では不十分だった観察,実験の部分をサポートできる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。