研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -084/123page
【家庭】
(1)コンピュータを活用した学習指導の基本的な考え方
<1> 新学習指導要領における基本的な考え方
高等学校の家庭科教育は,普通教育としての内容と職業教育としての内容の2面性を持っている。いずれにおいても,指導の効果を高めるためにコンピュータ等の活用が明記されている。
特に,前者においては,「家庭一般」で生活情報活用の一手段としての利用,「生活一般」「生活技術」では,コンピュータの操作も位置づけられた。後者は「家庭情報処理」が新設されコンピュータリチラシーをはじめとして,情報を効果的に活用するための知識と技術を身につけることになった。
<2> 本県の家庭科におけるコンピュータ活用の実態
県内で家庭科の授業にコンピュータを活用している学校は12校と極めて少ない。この12校にどのように活用しているかのアンケート調査を行ったところ17の事例が寄せられた。
その内訳は「家庭一般」5例,「家庭情報処理8例,「家庭経営・住居」2例,「食物」,「情報処理I」各1例であった。活用領域は,食物,情報処理領域が多く,次の通りである。
食物領域(栄養計算,診断等) 7例 情報処理領域(BASIC、ワープロ等) 7例 家庭経営領域(家計簿記) 2例 被服領域(デザイン配色) 1例 使用したコンピュータの機能は,計算機能が約42%と最も高い(図3−8参照)。これは,上記領域の内容に計算処理的な要素を含むことから,妥当な結果であろう。文書作成については「家庭情報処理」の多くが ワープロ実習を扱っていることによる。
コンピュータの利用目的は図3−9の通りである。
コンピュータリテラシーの育成が少ないのは,情報処理教育がまだ機能していないためと思われる。
「学習指導内容とコンピュータの関連」を示す資料は80%が持っておらず,またその大半が資料を欲していることがわかった。
授業におけるコンピュータの効果的な活用を図るには,年間を見通した中での明確な位置付けが必要である。
<3> 家庭科におけるコンピュータ活用の視点
コンピュータ活用のねらいのひとつに,合理的な生活管理能力の育成がある。家庭経営の立場から生活情報をいかに収集,判断,整理,選択したらよいか,それには,質の高い新鮮なデータベースの構築が必要となる。また創造性や自らの表現能力を重んじる家庭科学習には,シミュレーションやグラフィックなどの活用で,例えば,生活設計や住空間の構想,被服領域でのデザイン,配色などの幅を広げるなど,従来の教育方法では必ずしも十分といえなかった側面にも教育効果が期待できる。
そのためには,コンピュータをどの場面に使うと効果的かを明確に把握したうえで,それらニーズにあった活用方法の検討が必要である。
これらをふまえ,家庭科ではコンピュータ活用の視点を次のようにとらえた。
1−観察,調査,生活関連情報等のデータベース化及び検索など資料としての活用
2−実験・実習,調査等のデータの処理・解析,診断の支援としての活用
3−創造性や構想の幅の拡大の支援としての活用
4−問題解決学習の支援としての活用