研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -029/109page

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ジェクタビリテイ (Jectability) 
 これは福島県教育センターの造語である。 judgment(判断),expression(表現),creation (創造),thought(思考)のそれぞれの頭文字に -ability(能力)を合成したものである。本研究では, これを判断力,表現力,創造力,思考力等の能力と規定 して用いる。  

 「個性を発揮しつつ生きることができる力を 育てるためには,児童生徒一人一人が自分のものの 見方や考え方をもって判断し行動できるようにする ことが大切であリ,各教科において,思考力, 判断力,表現力などの能力の育成を重視する必要 がある。」(「小学校指導書 教育課程一般編」 文部省 平成元年6月刊)と示されているように, ジュクタビリティは「自分のものの見方や考え方 のもとになる大切な要素と考えられるものである。  

4 研究仮説と実践研究の方策  

 本研究では,研究理論に基づいてまず全体仮説を設定した。それをもとに各教科と道徳の時間における研究仮説を設定し,実践を通して主題を追究した。 

(1)研究仮説の設定と実践への具体化の方向  

 実態調査を通して明らかにされた個人差に応じた指導の必要性や,一人一人のものの見方や考え方を大切にする指導の重要性という課題を,実践的に解決していくために,研究のための基本的な考えに基づいて研究仮説を次のように設定した。 

研究仮説 
 学習指導において,児童生徒の持っている 「よさ」や「その子らしさ」を把握し,その 「よさ」や「その子らしさ」を生かす視点か ら,達成度の個人差や興味・関心,適性に応 じる指導の在り方を工夫すれば,基礎的・基 本的な内容を身につけさせたり自覚させたり するとともに,一人一人の個性を生かし,伸 ばすことができるであろう。  

 更に,研究仮説を検証していくために,「実践 への方策」と「実践への具体化の方向」を図1 (30・31ページ)のように考えた。各教科では, 教科の特性によって多少の違いはあるものの,お およそこのような形で実践への具体化の方向とし て位置づけられるものと考える。  

 なお,「実践への具体化の方向」については,各教科や道徳の時間の実践の中で取り扱われる教材,題材等に即して更に具体化されていくものである。 

(2)「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習 指導の基本型  

 28ページに示した3(2)「個性について」に記 載したように,ここでは,各教科で「よさ」を, 道徳の時間で「その子らしさ」を,「個性」に照 応する言葉として用いている。  

 【1】「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習 指導の基本型  

 基礎的・基本的な内容を定着させ,一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を生かし伸ばすことは短時間に可能なことではない。むしろ,長い目でみて変容を期待すべき性格のものと考えられる。したがって,学習指導においては中・長期的な展望に立った継続的な授業実践によって初めて可能になるものと考えられる。 

 本研究では,意図的,計画的に主題を追究する ための指導の展開を《「よさ」や「その子らしさ」 を育てる学習指導の基本型》として,32ページに 示した図2のようにとらえた。この一連の指導を 展開することにより,基礎的・基本的な内容を身 につけさせ,自覚させ,一人一人の「よさ」や「 その子らしさ」を生かし,伸ばすことが可能にな ると考えた。  

 そして更に,これらの指導の流れを繰り返し実践することにより,一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を育てることができるものと考えた。 

 【2】「よさ」を育てる学習指導の段階  

 ○ 「よさ」の把握 


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