研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -033/109page
II 小学校体育科における実践研究
1.体育科における研究の仮説
(1)「基礎的・基本的な内容」,「よさ」とのかかわり
小学校体育科の授業実践において,基礎的・基本的な指導内容は,学習指導要領に示されている各学年の目標及び内容ととらえた。
児童が,各単元において,自分に適しためあてや意欲を持って学習に取り組むことができれば,基礎的・基本的な内容の定着が図られると考える。
自分のめあてに迫る過程において,児童はこれまでの運動の経験や既習事項をもとに課題意識を持ち,それを解決するために様々な工夫をする。その過程には,学習の見通しや思考,課題解決の方法などが様々な形で表れてくる。そのような児童一人一人が持つ多様な考え方や行動特性等を,その子の持つ「よさ」ととらえた。
そこで本研究では,基礎的・基本的な内容の定 着を図る過程において,児童一人一人の持つ「よ さ」が生かされ意識化されるような学習活動を設 定した。その過程でジェクタビリティが刺激され, それぞれが相互に作用し合い,基礎的・基本的な内容が定着するとともに個性の伸長も図られるも のと考えた。
(2)研究の仮説
体育科学習指導において,児童一人一人の持っている「よさ」を把握し,学習内容とのかかわりから,技能の到達度と児童の興味・関心,意欲に応じた課題を持たせて,楽しく運動を行う授業の在り方を工夫すれば,基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに,一人一人の「よさ」を生かし,伸ばすことができるであろう。
《仮説について》
○ 児童一人一人が持っている「よさ」の把握
児童の行動特性の調査,体育科及び単元で取り 扱うマット運動と跳び箱運動に対する興味・ 関心にかかわる調査,運動能力の調査を事前に実施し, 児童の「よさ」を把握する。
○ 技能の到達度に応じた課題
毎時間の復習とグループ内での教え合いにより 自分の到達度を知らせる。それをもとに,コース カードを利用させ,自分に合ったコースを課題と して選択させる。
○ 児童の興味・関心,意欲に応じた課題
教師が難易度別に技を組み合わせたいくつかの コースを提示する。児童には,興味・関心,意欲 に応じてコースを選択させ,単元終了までに身に つける技能を学習させる。
○ 楽しく運動を行う授業の在り方の工夫
・単元設定の工夫
一般的には,主運動として取り上げられる二つ の運動を組み合わせた1単位時間の設定で,運動 量を確保する。その結果,児童の活動したい欲求 を充足させることができる。
また,運動の特性に触れさせる指導計画や場の工夫をすることにより,飽きさせることなく,友達の「よさ」を認め合いながら学習をさせることができる。
・学習形態の工夫
グループ内での練習の場を設けることで,協力 して教え合い,励まし合う学習活動を展開させる。
○ 基礎的・基本的な内容を身につけさせる
児童一人一人の持つ「よさ」を把握し,技能の 到達度や興味・関心,意欲に応じた課題を設定し, 楽しく学習できるように工夫することにより,器 械運動領域におけるマット運動と跳び箱運動の基 礎的・基本的な内容を身につけさせる。
○ 一人一人の「よさ」を生かし,伸ばす
事前の調査や学習指導で把握した児童一人一人 の「よさ」を生かしながら,学習内容と活動の面 から児童一人一人の持つ「よさ」を意識化させる ような場を設定する。そして,自己評価,相互評 価,教師からの評価を通して,自分の「よさ」を 生かせるような学習活動を位置づける。