研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -039/109page
【4】グループ内での学習の仕方のエ夫
グループにおいて,お互いの「よさ」を見つけながら学習を進めることにより課題達成の意欲が高まる。更に,自分一人では,気づかないようなところを教え合うことにより,意欲が高まり,基礎的・基本的な技の定着につながるものと考え,グループ学習の時間を十分確保した。
【5】学習意欲を高め持続させるエ夫
個人カルテ(「がんばり記ろくカード」)に記入する内容は,意欲の向上やお互いの協力,練習後の成就感に関するものである。また時間ごとの意識の変化が一目でわかるように,グラフ化させた。
このことにより,児童は,「次の時間は,もっとがんばってみよう」とする意欲が高まるのではないかと考えた。
特に,毎時間記入させると時間を取られるの で,図7のように,2時間ごとに記入させること にした。
(4)「よさ」の意識化
【1】「よさ」を意識化させる場の設定
児童は,グループ学習の中で自己の課題を解決しようとするとき,友達どうしの教え合いや助言によって,技能をより向上させようと努力する。
単元指導計画の4時間目に,班の中で自由にコー スを選択させ発表する活動を設定した。仮にやさ しいコースを選んでも,技の表現・技の組み合わ せに工夫が見られれば,個の持つ「よさ」は,発 揮されているものと考えた。
更に,5・6時間目の発展学習の段階では,技 のできばえだけでなく,技の組み合わせの独創性 やつなぎの工夫をさせた。そして,最後に班の代 表が発表する際にも,これらの観点から選ばせた。
以上のことから,児童は,常に技の表現・つなぎの「よさ」を意識しながら練習するようになった。
【2】自己評価による意識化
ア 個人カルテの活用
2時間ごとにグラフ化したカルテは,学習カー ドのファイルに綴じ込んであるので,児童は,自 分の意欲等の変化をいつでも見ることができた。 そのことにより,意欲面の「よさ」を意識づける ことができると考えた。
なお,用紙は,目立つように黄色の画用紙にした。
イ 学習カードの活用
学習カードの中央には,自分の似顔絵と自分の 「よいところ」を書かせた。また毎時間のまとめ の段階で,自分の「よいところ」という視点から, 「あなたのよいところ・・・・きょうはどうでし たか?」の項目で自己評価させた。更に「きょう のあなたのよいところを友だちはどう書いてくれ ましたか?」の項目で,友達が教えてくれた自分 のよいところを確認させた。このことにより,常 に自分を振り返らせ,「よさ」の意識化を図った。
【3】相互評価による意識化
使用する学習カードに,「きょうのじゅ業での 友だちのよいところを書きましょう」の欄を設け, 「運動について」「たい度について」の二つの評 価の観点を設定した。そのことにより,相互に 「よさ」をみつけさせようとした。更に,グルー プの中でお互いにカードを交換し合って読むこと で,自分の「よさ」を意識して学習に取り組むこ とができた。
【4】教師からのコメント
使用する学習カードには,教師からのコメント を記入するために「先生からあなたへ」の欄を設 けた。そこには,技の向上した点やその子の「よ さ」を意識化させるような内容を記入した。
(5)「よさ」を伸ばす指導
【1】創作活動の場の設定
児童が学習してきた中で,技の達成度や興味・ 関心には差がみられる。そこで,児童の達成度に 応じたマット運動と跳び箱運動の組み合わせによ る創作活動の場を設定した。
連続技を創作する過程で,意欲を持って自分の課題を達成しようとするとき,その子の「よさ」が表れる。更に,発表の場を設けることにより,お互いの「よさ」を認め合うことになる。
したがって,創作活動の練習や発表の場を設定