研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -042/109page
コースカードに書かれている内容は,児童一人 一人の技の練習の視点であり,協力して学習する 際の技を見る視点にもなった。そのことが,自分 の技をよりよいものにしようとする意欲づけにつ ながった。
事前と事後のマット運動と跳び箱運動に対する 興味・関心の調査では,表1のような結果が見ら れた。
【3】課題練習の過程での工夫
ア 個に応じた練習の場の設定
図6のように,個に応じた練習の場を設定し, ロールマットやロイター板などを活用させた。児 童は,自分のめあてを達成するため焦点を絞った 練習ができ,基礎的・基本的な内容の定着が図ら れた。
授業中の様子を見ると,跳び箱の高さや向きを変えるなど工夫していた。また,ロールマットなどを自分たちの場所に移動し,跳び箱を得意とする友達から教えてもらって練習していた児童もいた。
このように,個に応じた練習の場を設けたこと は,児童一人一人の「よさ」を生かすために有効 であった。
イ グループ編成の工夫
異質グループ編成による本授業では,技の得意 な児童が苦手な児童に教えたり,得意な児童どう しまたは,苦手な児童どうしが教え合っていたり する姿がよくみられた。ある児童の学習カードの 相互評価の欄には,「M男君がみんなにおしえて くれた」と書かれており,グループ内での活動が 活発であったことがうかがわれた。
更に,事前と事後のグループ学習に対する調査 を比較してみると,表2のように変容がみられた。
(表2)
質 問 項 目 事前 事後 グループで練習したい 67% 94% 友達に教えるのが好き 38% 85% 友達に教えてもらうのが 好き 47% 70% このことからも,異質グループ編成は,技能の向上のみならず,学習意欲の高揚や児童一人一人の「よさ」を生かすのに有効であった。
【4】グループ内での学習の仕方の工夫
毎時間のグループ内での練習において,児童が お互いに,手を着く位置やつま先の伸ばし方など, 技のポイントを教え合ったりする姿が数多くみら れた。また学習カードの相互評価の欄には,例え ば片足水平立ちで3秒以上静止するときに,「A 子ちゃんが一緒にかぞえてくれた」とか,連続技 の練習をしたときに,「M男君が技の順番をおし えてくれた」等の記載があった。
抽出児のT男は,マット運動や跳び箱運動を得 意にしている児童である。T男は,班長でありな がら自分だけの勝手な練習が目立ち,誰にも教え ようとはしなかった。しかし,授業が進むにつれ て友達と協力するようになり,班長らしい行動を するようになってきた。特に5・6時間目の創作 活動の場面では,自分独自の技に意欲を示すとと もに,友達の演技に対し的確な助言をしたり,補 助をしたりする姿がみられた。
このことからも,協力をして学習することで,常に自分は,友達から応援されていることを意識し,課題達成への意欲が高まっていったと考えられる。
【5】学習意欲を高め持続させる工夫
個人カルテの第2時間目から第6時間目までの 自己評価(図7)から,88%の児童が「よし,が んばるぞ」という気持ちで授業に参加したり, 「この次の時間もがんばってみたい」など,学習に 対する意欲の高まりがみられた。