研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -043/109page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 また,個人カルテに書かれた,児童の感想の中 には「とても楽しい6時間だった。マット運動 OK。」とか「いっしょうけんめいになって教え たり練習したりできてよかった。またこんなじゅ 業がしたい。」というものもあった。

 ただ,3・4時間目の《「やった!」「スカッ とした」などの気持ちを味わえましたか》の項目 で,12%の児童の意欲が低下していた。これは, 技の得意な児童が,すべてのコースを短時間で簡 単に達成してしまったためと推測される。

 個人カルテに,自分の気持ちを素直に表現することは,自分の「よさ」を再認識し,次時への学習意欲の高揚を図る大きな手だてとなった。

 このように,学習意欲が高まったのは,個人カルテに記入の際,「今度はがんばろう」とか「もっと教えよう」などの意識が一層明確に目標化されたためと考えられる。

(3)「よさ」を意識化させる指導について

 【1】「よさ」を意識化させる場の設定

 1・2時間目の課題把握と解決の段階では,既 習の技やこれから学習する技の練習で,お互いの 学習への取り組み方について「よさ」を相互評価 させた。3・4時間目の学習内容の理解と定着の 段階では,児童に自由にコースを選択させ学習を 進め,児童一人一人ができるだけ多くのコースを 達成するため,技の細かいところまで教え合うこ とでお互いに「よさ」を意識化していった。また 5・6時間目の発展学習の段階では,技が上手な だけではなく,組み合わせ・技のつなぎを工夫し ている人や,技が上手になった人などの具体的な 視点を示し,各班で発表する代表を選ばせた。こ れにより児童は,誰が工夫しているのか,誰が上 手になったかといった観点で「よさ」を意識化す るようになり,お互いが協力して学習を進めるう えで有効であったと考える。

  【2】自己評価による意識化

 学習カードの中央に,自分の似顔絵と自分の「よいところ」を書かせ,それを毎時間記入させることで,常に自分を意識しながら学習に取り組ませるようにした。

 「よさ」の自己評価の欄には,自分の「よいところ」が,今日の授業の中でどのように生かされたかを記入させた。

 単元の最初のころは,自分の「よいところ」と自己評価の欄がうまくつながらず,どう自己評価するのか理解できない児童が多かった。そこで,「今日の授業で,あなたのよいところが表れましたか」といった,教師の具体的な助言により,書けるようになった。

 基礎的・基本的な内容の定着に関しては,毎時 間めあてを記入させ,特に1・2時間目では,で きた技を色鉛筆で塗りつぶしたり,自分の似顔絵 のところまで線で結び,技ができたという意識を 持たせた。

 T子は,学習カードに自分のよいところを「い つしょうけんめいやることです」と書いており, 自己評価の欄では「あきらめないで,いっしょう けんめいやった」と書いた。

 このように,時間を追うごとに,児童一人一人 が自分の「よいところ」を意識して学習できるよ うになった。

写真

 【3】相互評価による意識化

 ア 学習カードの活用

 毎時間のまとめの段階に,グループ内で学習カードを交換しお互いに読み合うことによって,自分の技や態度についての友達の評価を知ることができた。友達が書いてくれた感想を,学習カードに改めて記入することは,自分の「よいところ」を意識化する大きな手だてとなった。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。