研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -045/109page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 表3の調査結果をみると,「よさ」を伸ばすに 関連する項目では,「学習カードを使って練習し たい」「自分で考えた方法で練習するのが好き」 の項目で変容がみられた。それは,連続技の創作 活動をさせたことで,児童が自分の力で考えて学 習したり,進んで練習する自発的な姿勢が育って きたと思われる。したがって,このような創作活 動は,児童一人一人の「よさ」を伸ばすためには 有効であった。

(表3)変容がよく見られた項目
   (体育科学習における興味・関心,意欲の調査より)
質 問 事 項 事前(%) 事後(%)
 学習カードを使って練習したい 6人(18) 18人(53)  
 時間をかければめあてができる 7人(21) 21人(62)
 自分で考えて練習するのが好き 5人(15) 27人(79)
 どの運動も一生懸命練習したい 13人(38) 29人(85)

* 肯定的な回答として「どちらかといえばあては まる」と「とてもよくあてはまる」の2つの選択 肢を設定したが,ここでは「とてもよくあてはま る」と答えたもののみ集計した。

(5)基礎的・基本的な内容の定着とジェクタビ リティについて

 今回の実践では,基礎的・基本的な内容を定着 させ,個性の伸長を図るためにジュクタビリティ とのかかわりを単元指導計画や授業案の中に具体 的に位置づけた。例えば図3のように,3・4時 間目の学習内容の理解と定着の段階では,「表現 力=技のつながりの表現」,コース学習では, 「判断力=自分に合ったコースカードの選択」5・ 6時間目の発展学習の段階では,「思考力=自分 の技の生かし方の工夫」「創造力=技の工夫と自 分らしさの創造」ととらえて表した。

 このことによって教師は,基礎的・基本的な内容を定着させ,個性を伸ばすために,児童のジェクタビリティとのかかわりを常に意識しながら取り組むことができた。

 その結果,児童は毎時間,ジュクタビリティが刺激され,意欲的な学習活動につながったと思われる。

 3・4時間目に行ったコース学習で,5つのコー スすべてを達成した児童は58%だった。また,第 4学年で習得しなければならない「前転」「後転」 「側転」「片足水平立ち」「首倒立」「開脚跳び」 「かかえ込み跳び」の習得状況は,それぞれ80% 台であった。

 また,5時間目まで開脚跳びができなかったが, 6時間目の発表のための練習のときにそれができ るようになり,学習カードに「開きゃくとびがで きるようになった。ヤッター!」と書いて喜びを 表している児童もみられた。

 このように,3・4時間目のコース学習までに はできなかった技が,5・6時間目の創作活動の 練習の場面でできるようになった児童もみられ, 単元全体を通して基礎的・基本的な内容の定着が 図られた。

5.体育科における研究のまとめ

 今回の実践研究においては,把握した児童の「よさ」を各段階ごとに生かし,意識化させ,伸ばす指導の在り方を追究してきた。

 そのために体育科として,「異質グループにおける個に応じた練習の場の設定」「マット運動と跳び箱運動(主運動と主運動)を組み合わせた指導計画の工夫」「単元全体を三つの大きな区切りとしてとらえた指導計画の工夫」以上の三つの視点で今回の実践を行った。

 以上のような手だてを通して,児童は主体的に学習に取り組むようになり,基礎的・基本的な内容の定着が図られた。また,自分の「よさ」に気づき伸ばそうとすることにより,個性の伸長につながったと考える。

 ただ今回の実践で,個に応じた多様な練習の場を設定したため,準備と後片づけに時間がかかりすぎることもあったこと,この領域の運動が得意な児童に合ったコースカードの内容の工夫が足りなかったこと,などが反省点としてあげられる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。