研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -050/109page
らも把握し,それを授業に生かせるよう二人の教 師が指導助言を与えた。そのことにより,生徒に 自らの「よさ」を意識させながら活動を進めてい くことができた。更に,生徒の能力に対応した個 別指導を行うことにより,言語材料の確かな定着 も図られた。
【4】座席表の活用
児童生徒一人一人の「よさ」を把握し学習に生 かすために座席表を活用した。
例えば,国語科においては,児童の教材に対する見方や考え方を生かすために,座席表を活用した。「学習プリント」の視点を学習の課題として設定し,その視点に対する児童一人一人の見方や考え方を座席表に記入し,指名構想を持って授業に臨んだ。児童の見方や考え方を,意図的な指名により引き出して話し合わせ,より多面的で深い思考を促そうとした。
図画工作科においては,指導の各段階ごとに一斉指導に生かせる児童を抽出したり,授業中に個別に「よさ」を意識化させたりするための助言を書き込んだりして座席表を活用した。更に,「個人カルテ」にも必要なことを記録していった。
道徳においては,事前に実施した意識調査を座 席表に整理し,発問研究や意図的指名により「そ の子らしさ」を生かす資料とした。また,整理さ れた座席表を児童に配付することにより,意見交 流場面における交流相手を決めさせる大切な資料 としても活用した。
(3)「よさ」や「その子らしさ」の意識化
児童生徒に自分の「よさ」を意識化させるためには,自分で自分の「よさ」に気づくことだけでは不十分であり,友達や教師など他からも認められることが重要な要素になると考えた。
そこで,教材,題材内容と学習活動とのかかわりから,児童生徒一人一人が自らの「よさ」を意識化できる多様な学習活動の場面を,指導計画の中に位置づけた。このような学習活動の積み重ねが,児童生徒一人一人の「よさ」の自覚につながると考えた。
【1】自己評価,相互評価,教師の評価による 「よさ」の意識化
小集団学習の中に自己評価,相互評価,教師に よる評価の相互交流による「よさ」の意識化の場 を設定した。
例えば,社会科においては,小単元のまとめの 段階で,児童一人一人の学習の成果を教師と児童 たちによって認め合う場を意図的に設定した。 「よさ」を見つける観点として,「気づいたよい ところ」と「がんばったところ」の2点を示した。 前者は,学習内容とのかかわりで認め合うもので あり,社会認識の深まりを児童一人一人に意識さ せる意図も含まれている。後者は,学習活動の様 子を認め合うことをねらったものであり,以後の 学習への意欲を喚起するための意図も含んでいる。 具体的には,「友だちのよいところを見つけよう」 をめあてに,友達の発表を聞いてよかったところ をノートにメモさせ,そのメモをもとに,「こん なところとってもイイね」カードを活用し,児童 どうし,教師による「よさ」の認め合いの活動を行った。