研究紀要第87号 「基礎・基本の定義と個性の伸長に関する研究 第5年次」 -052/109page

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 【2】個人カルテの活用 

 基礎的・基本的な内容の定着を図り,「よさ」 を把握し,生かし,伸ばす手だてとその結果を記 録するために個人カルテを活用した。そのことは, 児童生徒の「よさ」を生かし,伸ばすための指導 に効果的であった。更に,転記する内容や量を十 分考慮し,教師の記録の負担を軽減する個人カル テの在り方を工夫してきた。

 例えば,算数科においては,事前調査で把握した児童の「よさ」を個人カルテに児童自ら書かせ,常に自分の「よさ」を振り返えらせた。自己評価と教師からの評価は,個人カルテの表に書き,相互評価は,「お手紙カード」を使い個人カルテの裏にはりつけるようにした。

 図画工作科においては,自己評価,相互評価,教師からの評価のカードをタックシールに印刷し学習カードにはりやすいようにした。それを縮小コピーして個人カルテにはり指導に生かした。

 体育科においては,意欲の向上やお互いの協力,練習後の成就感に関する内容を自己評価させた。自分の気持ちを素直に表現することにより,児童は自分の「よさ」を再認識すると同時に,次時への学習意欲の高揚を図るもとにもなった。

(4)「よさ」や「その子らしさ」を伸ばす

 児童生徒一人一人の持つ「よさ」は,一つの単元の学習やその領域の学習の中にすぐに表れるとは限らない。したがって,長期的な見通しを持って,児童生徒をじっくりみつめ,地道な観察を通してその子の「よさ」を認めていくことが必要になってくる。

 そのうえで「よさ」を生かしながら,適切な教材で意図的に学習指導を繰り返すことによって,「よさ」が伸ばされ,育てられるものと考える。その意味において,検証授業はそれぞれ比較的短期間であったが,その中でも「よさ」を生かし,伸ばすため単元のまとめの段階でいろいろ工夫し実践した。

 例えば,国語科においては,第2次実践ででき あがった作品をグループごとに「グループ文集」 としてまとめさせた。文集には,作品だけでなく,作品ができるまでの「構想表」,それぞれの作品 に対する教師のコメント,「[よさ]発見カード」 もあわせてとじ込んだ。他のグループの文集を読 むことで,お互いの「よさ」の認め合いとなり, 更に,班員以外の児童の感想を読むことで自分の 「よさ」を再認識し,伸ばすことにつながった。

 社会科においては,表現特性を生かすまとめの活動を行った。観察・調査の結果,分かったことを自分の得意な表現方法を用いてまとめさせた。ある児童は絵を用いて視覚的にまとめたり,ある児童は表を作成して構造的にまとめるなど多様な表現方法が見られた。また,演繹,帰納の各学習の仕方に応じたそれぞれの課題解決の流れにそってまとめさせた。更に,まとめる過程でわかった事実に対して,自分なりの解釈を付け加えることやわかった事実のつながりを自分なりに考えさせまとめさせた。

 算数科においては,基礎的・基本的な内容の学習を終えたところで,それらの学習内容を生かして,問題作りとそれを解き合う発展学習の場を単元の最後に設定した。問題作りの場面では,児童一人一人の学習内容の理解度や定着度の違い,生活経験の違いなどが,児童の創意,工夫などの違いと相まって,多様な問題が作られた。その問題を印刷し一冊にまとめた。自分が作成した問題を友達が解いてくれることは,大きな喜びとなった。解き終った後,問題を作った児童に採点してもらい,問題についての感想を書き,それぞれの児童の台紙にその感想をはらせた。児童は多くの友達から寄せられた感想を読むことで自分の「よさ」を意識化し,更に伸ばそうとする意欲にもっながった。

 体育科においては,単元のまとめの段階において,マット運動と跳び箱運動を達成度,興味・関心と意欲に応じた技を組み合わせた創作活動の場を位置づけた。そのことにより,自分の技の習得に応じた連続技を表現することができた。また,発表会を通して,お互いの「よさ」を認め合い,伸ばすことにつながった。


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