研究紀要第88号 「授業におけるコンピュータの効果的な活用に関する研究 第2年次」 -069/109page
Aタイプの生徒は,全体的にコンピュータを用いた授業を好意的にとらえている。
Bタイプの生徒は情意面(興味・関心)が底く,認知面(基礎学力)が高い生徒であるが,情意面での高まりがみられ,コンピュータ活用の学習がよい印象を与えたと考えられる。さらにソフトウェアを工夫することにより,学習意欲や興味・関心の向上が期待できる。
Cタイプの生徒は・Bタイプの生徒とは反対こ,情意面が高く,認知面が低い生徒であるが,コンピュータの活用によって認知面での高まりが見られる。コンピュータの継続的活用によって学習内容の定着が高まると考えられる。
Dタイプの生徒には,特徴が見られないが,コンピュータ活用に好意的な感想の3項目を選択している。より個別的な学習活動を援助できるソフトウェアを作成し,コンピュータを活用させる必要を感じた。
(2)授業者の感想と観察
単元全体を通して指導した授業者の感想と授業者の観察による生徒の変容を以下に述べる。
[1] 授業者の感想
・Bタイプの生徒は,コンピュータで授業す
ることにより意欲的に学習でき,理解を深め
ることができた。
・生徒に意欲を持たせる意味では,今回の平
面図形でのコンピュータの活用はたいへん良
かったと思う。
・日頃ほとんど授業にも参加できず,テスト
で点数がとれない生徒でもコンピュータ活用
の授業を通して,少しでも理解でき、成就感
が味わえたことはたいへん良かった。[2] 授業者からみた生徒の変容
(その1)C男の観察(タイプC)
事 前 ・一学期.数学への意欲は感じられない。
宿題はやってきたことがない。基礎的な
計算もやろうとしない。
・文字式につまづきがあるが.意欲がない
ため個別指導してもなかなかつまずきが
解消できない。↓
事 後 ・コンピュータで学習するようになり,自
分から進んで間題解決するようになり,
作図の基礎基本も定着している。(その2)D男の観察(タイプD)
事 前 ・数学は嫌いだという感度で授業に臨む。
・文字式につまずきがみられる。
・解らないところは隣の席の者に教えられ
て,ようやく理解する毎日である。↓
事 後 ・コンピュータで学習により数学の授業に
意欲的に取り組むようになり,作図の基
礎基本も定着した。テストにもそれが良
く現れている。
・自分で問題を解こうとするように変わっ
てきた。(3)ソフトウェア活用についての考察
ソフトウェアが実際にどのような効果があったかについて,授業者や生徒の感想などから,次のようなことがいえる。
[1] 単元途中の概念形成のツールとして
・教科書に準じていたので,生徒は教師の説明の後,実際にコンピュータを操作して作図方法を体験的にとらえられこと,また繰り返し確認できたことにより,作図の基礎の定着が図られた。
・ソフトウェアが効果的に作られていたので,思考させる場面でも活用することができた。
[2] 問題解決のためのデータベースとして
・生徒が必要な学習内容に関する情報が豊富なため問題解決の資料として有効に活用できた。
・既習事項の確認が必要なときはメニュー画面が有効であり,どこを確認すれば解決できるかの判断できる生徒が多くなった。
以上から,作成したメニュー形式のソフトウェアは,学習内容の定着や問題解決的学習において有効であり,その活用の場を明確に位置づけたことによって効果的であったことが分かった。
(4)まとめ
本研究においては,多様な生徒に対応できるようショートプログラムを一本化したメニュー形式のソフトウェアを作成して活用させた。検定の結果から,生徒のタイプによってコンピュータ学習の受けとめ方や効果が大きく異なることが分かった。コンピュータ活用の学習指導においては,生徒の個性や特性を十分把握し,それに応じた多様なソフトウェアを開発する必要があることが分かった。今回開発したソフトウェアでは,メニューをより細分化して生徒の実態に多様に対応させ,授業の中で継続的に活用ができるようにさせれば,さらに効果的であったと思われる。