研究紀要第88号 「授業におけるコンピュータの効果的な活用に関する研究 第2年次」 -070/109page

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IV 高等学校における研究実践

1.研究副主題との関連

 生徒の身近な生活情報をデータベースとして作成・活用させることで,情報活用能力を育成しながら問題解決を図る。その間題の把握から解決に至るまでの過程を通して,学習意欲,達成感・成就感を高めたいと考えた。

2.ソフトウェア開発のねらい

 コンピュータ活用場面を,学習指導過程の三段 階に位置づけ,高める要素を図IV−1のように設定 し,次の視点からソフトウェアを作成する。

図IV-1 コンピュータ活用場面と3要素の設定
図IV-1 コンピュータ活用場面と3要素の設定

○本題材の導入時に,学習の動機づけができるソフトウェアを提示する。また,自己診断ソフトウェアで具体的に問題点を把握させ,解決のヒントを提示することで関心を持たせ,学習意欲を高めるようにする。

○データベースを作成させ,検索を通して情報を活用することで,主体的に問題を見い出し解決できる能力を育成し,情報活用能力を高めるようにする。

○生徒のタイプに応じた各種情報を提示し,問題解決と学習内容の定着を図ることで,達成感・成就感を高めるようにする。

 これらソフトウェアは,個々の生徒の実態に応じて作成できるデータベースを中心にメニューで知りたい項目を自由に選択したり,繰り返し見たり,自己診断結果に応じてコメントが提示できるような構成とすることで,生徒一人一人に応じられるようにする。

3.研究実践の概要

(1)研究題材の設定

 本題材「被服計画」は,被服の購入から着装,手入れ,保管,廃棄までを含めた総合的な衣生活の管理計画のことをいう。従来は,時間の制約から,被服所持数を調べ過不足を検討するに留まっていたが,コンピュータの活用により,調査内容のデータベース化を図り,それをもとに生徒の実態に応じた被服管理計画を構想させたいと考えた。そうすればこれら学習活動を通して自分の衣生活の在り方を見直し改善していこうとする主体的な学習態度が促されるものと考える。

(2)実態調査

 生徒の実態を把握するために,情意面(家庭科の学習に対する興味・関心),認知面(被服領域の基礎・基本)のレディネステストを実施した。

 その結果(図IV一2)をもとに,事前調査,実態調査等も加味し,タイプごとの生徒の特徴をとらえた。そして,A〜Dのタイプごとに高めたい要素を位置づけ,それらタイプに応じたソフトウェアの内容を検討した(表4−1)。

図IV−2 レディネステストの結果
図IV−2 レディネステストの結果

表4−1タイプの特徴と要素の設定
タイプ 生徒の特徴 高める要素 ソフトウェアの内容
 A

認知(+)
情意(+)
問題意識を持ち、意欲も
高い。合理的な考え方が
出来、落ち着いた行動を
とる傾向が多い。
達成感・成就感
情報活用能力
被服計画作成において、自
ら必要な情報を検索して問
題解決し、計画の構想がで
きるコースとする。
 B

認知(+)
情意(−)
理解力、思考力はあり、
与えられた問題はこなす
が、消極的な行動をとる
傾向が多い。
学習意欲

情報活用能力
学習の関連資料を提示し、
ヒントを与え、自ら問題を
持ち被服計画の構想ができ
るコースとする。
 C

認知(−)
情意(+)
意欲的であるが基礎・基
本が不足しているため、
問題解決までの見通しが
持てない傾向が多い。
情報活用能力
達成感・成就感
既習内容を復習させながら
問題解決の見通しをもたせ
被服計画の構想ができるコ
ースとする。
 D

認知(−)
情意(−)
基礎・基本が身について
おらず、問題意識,意欲
ともに低く主体的な学習
行動がとれない傾向が多
い。
学習意欲

情報活用能力
衣生活の問題点を確認させ
意識を高め、被服計画の手
順を具体的に提示し確認さ
せながら被服計画の構想が
できるコースとする。


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