研究紀要第88号 「授業におけるコンピュータの効果的な活用に関する研究 第2年次」 -073/109page
図る(1〜2時限)。次いで衣生活自己診断ソフ トで,自分の衣生活の問題点を認識させる。並行 して,所持被服のデータベースを作成させる(3 〜4時限)。そして,データベースの検索・活用 を通して,主体的に情報を活用する態度の育成と 既習事項の定着を図る(5〜6時限:表IV-4参照)。 この問題解決の過程において,タイプ別学習を取 り入れ,それらタイプに応じた各種情報を提示す ることで,主体的な学習態度を促していく。そう すれば,生徒の実態に応じた被服計画が構想でき, 今後の衣生活改善への意欲と実践的態度が身に付 くものと考える。
なお,コンピュータ利用形態は,二人で一台の使用となるため,個人情報の扱いには配慮する。
[2] 授業の状況
商業科3年の生徒はコンピュータの操作には, ある程度慣れており,積極的に取り組んでいた。
学習の展開時においては,問題追究のために検索を始めると,「エー?」「ウソー!」といった驚きや疑問の声があがり,新たな発見に目を輝かせる生徒の姿がみられた。一方では,検索で知り得た情報を十分に生かせなかった生徒もいた。
タイプ別では,Bタイプは黙々と取り組んでお り,Cタイプは質問したり,隣の生徒と話し合う など活発で,対照的な学習態度であった。
4.結果と考察
(1)事前・事後調査の結果と考察
事前・事後調査(12項目)を実施し,t検定 により4タイプの変容をみた(表4-5)。
この結果から,次のことがいえる。
「学習意欲」は,すべてのタイプで高まってお り,特にCタイプが顕著であった。
これは,ソフトウェアの適宜性(活用場面とその内容)が好ましい結果に結びついたものと考える。
「情報活用能力」は,A,C,Dタイプに高ま りがみられた。
これは,データベースを課題解決の情報源として学習活動の中心に位置づけたことと,生徒自らデータを入力,整理,保存し,必要に応じて検索し活用する,といった一連の活動を通して高まっていったものと思われる。
「達成感・成就感」は,Cタイプ以外は変容が あまりみられなかった。
タイプ別では,C,Dタイプは高めたい要素が 伸び,効果がみられた。これは,基礎・基本が不 足しているため,問題解決までの見通しが持てな いような傾向を持つ生徒たちが,コンピュータか ら動機づけや解決のヒントを得たことで,学習意 欲や情報活用能力が高まり,特に情意面が高いC タイプはそれらが相まって,分かることの楽しさ, 学習への自信につながっていったものと思われる。
一方認知面の高いA,Bタイプは高めたい要素 の一つである達成感・成就感(A),情報活用能 力(B)の伸びが小さい。学習意欲は高まったも のの,内的な高まりまで啓発できなかったものと 考える。A,Bタイプには,さらに知的好奇心を 高めるような課題の設定が必要と思われる。
(2)抽出生徒の結果と考察
表IV−6は,各タイプ別の抽出生徒の事前・事後 調査の結果と感想である。
生徒A子は,情報活用能力,達成感・成就感に高い伸びがみられた。データベースの入力件数200