研究紀要第88号 「授業におけるコンピュータの効果的な活用に関する研究 第2年次」 -074/109page
とクラスで一番多く,目的を持って問題解決がで きた一人であり,満足感が読みとれる。
B子は,学習意欲の伸びが大きい。始めは何を やっているのか理解できないようだったが,コン ピュータの操作を通して問題の焦点化が図れてか らは,授業が楽しくなったと述べている。
C子は,達成感・成就感の伸びが大きい。コン ピュータから問題解決のヒントを得て積極的に取 り組め,満足を得たようである。
D子は,3要素とも伸びが小さい。最後まで学 習目標が理解できなかったようである。
表IV−6タイプ別抽出生徒の結果と感想
タイプ 生徒
学習意欲 情報活用 達成・成就 感 想 文 (一部抜粋) 事前 事後 事前 事後 事前 事後 A 3.5 3.8 2.8 4.2 3.3 4.7 不用衣類が多すぎる。自分が持っている被服の数や頻度、
その他いろいろなことがデータとなったので良かった。パ
ソコンを使っての授業は大変役にたつし、楽しいと思う。B 1.3 3.0 2.6 3.8 1.7 2.7 自分の持っている服を見直すよい機会だと思った。パソコ
ンを使って授業したのは楽しかったが、始めのうちは、何
のためにやっているかわからなかった。C 4.0 4.3 4.2 4.6 2.3 4.3 おもしろかったです。黒板を使ってやるより,こうしてや
った方がよいと思う。なぜかというと,コンピュータと1:1な
ので授業のポイントがわかりやすいからD 2.0 2.3 1.4 1.8 1.7 2.0 被服所持数が多いわりには、使わない枚数が多い。とても
面倒。なんのためにやったのか理解できなかった。これら抽出生徒は,図IV−2のレディネステストより選んだが,各タイプの傾向がよく出ている。
また,クラス全体の感想文や自己評価等をみると,「パソコンの操作がうまくできた」「授業が楽しくできた」と述べている生徒は,3要素いずれも伸びている。
(3)ソフトウェア活用についての考察
生徒が最も興味・関心を示したのが,衣生活自己診断ソフトであった。これは,具体的なコメントが提示されたため,自分の問題点が把握でき,学習意欲の高揚に結びっいたものと思われる。被服管理データベースについては,今後の衣生活管理の在り方を生徒に提示できたと思う。また,一連の操作を通して情報活用能力も高まった。さらに操作がしやすいような工夫をしていきたい。また,コース別学習で使用した情報提示のソフトウェアは生徒が最も知りたい情報を中心に,ポイントを絞って提示したことで生徒の関心を高め,解決の適切なヒントとなり,学習内容の定着に結びついた。
5.まとめ
研究実践からは,次のようなことがいえる。
○ねらいに応じたコンピュータの適正な活用場面の設定により,主体的な学習活動を支える学習意欲と情報活用能力は高まった。
○タイプ別にその変容をみると,認知面が低いC,Dタイプは高めたい要素すべてに効果がみられた。これは解決のヒントをコンピュータから自ら引き出すことで,問題解決の見通しができたためと考える。
特に情意面が高いCタイプは,積極的にコンピュータに関わったことで3要素すべてが高まった。
一方,A,Bタイプでは,達成感・成就感(A),情報活用能力(B)の変容が小さい。認知面の高い生徒たちには,知的好奇心を高める課題の工夫が必要である。
○ソフトウェアについては,作成のねらいがほぼ達成され有効であった。特に,題材の問題把握の段階で活用した自己診断ソフトは学習の動機づけとなり,学習意欲を高めるのに効果的であった。
これら実践を通して,ソフトウェアはコンピュータの特性を生かした内容で,操作が簡単でかつ視覚的でわかりやすい画面作りの工夫が大切であることを再確認した。
○生徒一人一人が,自らの課題を持って問題解決を図るような授業展開においては,学習課題を明確に持たせ,個々の生徒の学習成果を確認しながら授業を進めていくことが,特に大切である。
短期間の授業実践ではあったが,コンピュータの活用により,学習意欲を高め,各種情報を主体的に活用する態度を育むことができた。