研究紀要第88号 「授業におけるコンピュータの効果的な活用に関する研究 第2年次」 -075/109page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

V まとめ

 研究の第2年次は,コンピュータの効果的な活 用を目指し,コンピュータの機能を生かした教材 ソフトウェアを作成し,研究協力校において検証 授業を実施して児童生徒の主体的な学習活動の高 まりを調べた。小・中・高校の3校に研究協力を 依頼し,研究対象の教科として,小学校「理科」, 中学校「数学」,高等学校「家庭科」の3教科を 選んで研究実践を行った。

 研究対象の学級で認知面と情意面の二面からなるレディネステストを行い,これをもとに,A,B,C,Dの4つのタイプに分け,主体的な学習活動の3要素を高める教材ソフトウェアを作成して検証授業を実施し,その変容を測定した。

 ―小学校「理科」(6年)―

 観察.実験等において問題解決活動の場面で,コンピュータを知的ツールとして活用した。単元の導入段階では学習内容の提示を主とした提示型のソフトウェアを使用し,展開とまとめの段階では問題解決に必要な情報を児童自らの力で選択し活用できるようなソフトウェアを使用して,授業でコンピュータを活用した。一連の検証授業の事後調査から主体的な学習活動の3要素のうち「学習意欲」「情報活用能力」に高まりが認められた。「達成感・成就感」の変容は少なかった。

 ―中学校「数学」(1年)―

 コンピュータとそれ以外のメディアの組み合わせや生徒同士の話合い(相談学習)が多くなるような学習場面で,コンピュータ活用のあり方を追究した。検証授業では、図形領域を取り上げ,問題解決のために必要な情報を生徒が主体的に選択し,利用できるソフトウェアを使用した。特に,作図の指導では,生徒一人一人に作図の手法を習得させることに効果があった。検証授業の事後調査では3要素のうち「情報活用能力」に高まりが認められた。

 ―高等学校「家庭科」(3年)―

 生徒の身近地活情報を整理し,それらをデータとして蓄積するとともに適切に管理するためにコンピュータを活用した。生徒自身の身近な生活から発生したデータを処理するための一連の作業からそれまで気づかなかった新たな自分を発見した生徒が目立った。学習内容にあったコンピュータの活用場面を設定したことがよりよい効果をもたらしたと推測される。検証授業の事後調査からは,3要素の「学習意欲」「情報活用能力」に高まりが認められた。

 小学校の実践では各タイプで「情報活用能力」に,中学校ではAタイプで「情報活用能力」に,高等学校ではCタイプで「達成感・成就感」に特徴のある変容がみられた。全体を通して,主体的な学習活動の3要素のうち「学習意欲」「情報活用能力」に高まりが認められたが,「達成感・成就感」の変容はあまり認められなかった。

 本研究では,主体的な学習活動を促すために学習ツールとしてのソフトウェア開発と指導過程の工夫の二面からコンピュータ活用の在り方を追究してきた。その結果,コンピュータは,児童生徒の主体的な活動を促すことに効果は認められるが,タイプによってその効果に差があるということが分かった。これは,コンピュータから提供される学習情報の受けとめ方やその情報への必要感が児童生徒の実態によって異なるということを意味している。

 コンピュータの利用によって児童生徒の主体的な学習活動を促そうとすれば,コンピュータの必要な場面を指導過程の中で適切に位置づけるとともに,児童生徒一人一人のニーズに応じて活用できるソフトウェアを開発することが大切である。特に,情意面の低い児童生徒の「達成感・成就感」を高めることができる教材ソフトウェアを開発することが今後の課題となる。

 高度情報社会における教師には,教科指導に対する確かな指導観を持ち,コンピュータの機能を十分に理解し,授業の中で効果的にコンピュータを活用していくという姿勢が必要である。これからの学校教育では,児童生徒のみならず教師の新しい資質としてコンピュータリテラシー(コンピュータ活用能力)が求められている。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。