研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -032/117page
4 本年度の研究
本年度の研究は,次年度以降の研究のための準備段階としての意味を持つものである。
(1) 先行研究分析
アンケート調査については,秋田県教育センター,当教育センターの調査報告を分析した。いずれも評価全般に関する網羅的で綿密な研究であり,参考になるところが多かった。評価をテーマとする小学校社会科の研究としては,香川県教育センター,東京都千代田区立佐久間小学校,当教育センターの研究について分析した。香川県教育センターの研究からは,評価規準の設定の方法などについて,佐久間小学校の実践からは,情意面の評価に研究対象を焦点化した研究の在り方について示唆を受けた。
これらの先行研究の成果をふまえ,新しい学力観に対応する評価の在り方について考察した。
(2) 評価に関するアンケート調査
教育評価の中の情意面(関心・意欲・態度)についてその問題点と課題をさぐるために,県内の小・中・高等学校教諭290名を対象に意識調査を実施した。これは,3年間にわたる本研究を進めていく上での基礎的な資料ともなるものである。調査は,教育評価全般についての必要意識と実践状況以外については,情意面に絞って行った。内容は,情意面の評価の重要性と目的,実践状空札評価規準の設定,評価の客観牲,評価方法と設定場面,評価桔果の数量化,具体的な評価の手だてなどについてである。
これらの項目について調査結果の分析と考察によって,情意面に関する評価の在り方について,問題点や課題を明らかにしたい。
(3) 試行仮説による小学校社会科における実践
評価に関するアンケート調査と並行して,霊山町立掛田小学校を協力校として,6年社会科の歴史学習を対象に試行的検証授業を計画した。
その際,体験学習を取り入れた単元構成に配慮するとともに,単元全体での評価計画を立て,学習のまとまりごとに評価の観点を絞り,評価目標を明確にした。
評価の方法は,自己を足っめ高める働きとしての自己評価を中心に,確かめる働きとしての相互評価,援助する働きとしての教師からの評価を単元の中にそれぞれ位置付けた。具体的な手だてとしては.自己評価,相互評価のための「ふりかえりカード」を作成し,学習のまとまりごとに評価機会を設定することで,関心・意欲を喚起し,併せて思考力・判断力,表現力の深まりを図った。教師からの評価については,観察,発言・作品分析,「ふりかえりカード」などのすべての評価記録を総合的に診断し評価して「学習の記録」としてまとめ,フイードバックに生かせるものにした。
また,相互評価や教師からの評価の伝達の方法を工夫し,意欲を喚起させるとともに一人一人の「よさ」を見いだし育てることのできるものになるように配慮した。その外,「ふりかえりカード」の一つとして,2ヵ月後,時間の経過による関心・意欲の変容と児童の思考力・判断力の定着と深まりを見るために回想的評価を行った。
これらの試みについて,具体的に分析と考察を加え,その有効性をさぐりたい。