研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -038/117page
年代別傾向を見ると,「主観的になりがちである」という回答は30〜50代の教師より20代の教師に多かった。「方法によっては客観的に評価できる」の項目については,反対の傾向が見られた。
5 評価方法と設定場面
ア 各評価方法の停用場面
〔設問15〕次の各評価方法は,授業のどのような場面で使うことが多いですか。あるいは,有効ですか。3つの方法すべてでなくてもかまいませんので具体的にお書きください。 (ア)教師からの評価
各教科において,1学位時間の中で児童生徒の学習状況全般の観察記録をもとにした評価が最も多かった。具体的には,授業中の態度や単元ごとの小テストやレポートなどの提出物を評価の資料にしている。
行動観察も座席表やチェックリストを利用し,簡便で継続しやすい方法が工夫されている様子が見られる。(イ)児童生徒の自己評価
児童生徒の自己評価は,「自己評価カード」や「ワークシート」等の利用により,教科や学習内容により1学位時間や単元ごとに実施しているとする回答が多く見られた。「単に文章で書かせる」という回答も見られたが,児童生徒が取り組みやすいように評価カード等を使用しているとする回答も多く見られた。
(ウ)児童生徒の相互評価
児童生徒の相互評価は,発表や作品鑑賞等において最も多い。例えば国語科においては音読・朗読,発表,作文等,音楽科における歌唱や演奏,図画工作(美術)科こおける作品の見せ合いなどである。児童生徒がお互いの技能や作品のすばらしさを見せ合うことによって,そのよさを取り入れたり.更に自分の学習を発展させたりするためにこの評価方法が用いられていると考えられる。
イ 情意面の各評価方法の長所短所
〔設問16〕情意面の評価をする場合に,次の空方法の長所短所について考えていることがあれはお書きください。 各評価方法の主な長所短所として回答の多かったものを抽出し,下表のようにまとめた。回答実数は,長所としては「児童生徒の自己評価」,短所としては「教師からの評価」の項目が多かった。
情意面の各評価方法の長所短所
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評価方法 長 所 短 所 教師からの評価 ○ 観察,ノート,感想文等のたくさんの資料を用い
て総合評価できる(小・中・高)○ 比較的客校的である(児童生徒の自己評価,相互
評価に比較して)(小・中・高)○ 児童生徒のよい点を見いだす(小)
○ 教師と生徒のの触れ合いがあり意欲が高まる(高)
○ 主観的になる(小・中・高) ○ 児童生徒の内心までは分からない(小・中・高)
児童生徒の自己評価 ○ 自分について知る(小・中・高) ○ やる気を伸ばす(小・中・高)
○ 自信や励みになる(小・中・高)
○ 自覚が高まる(中・高)
○ 過大評価,過小評価の危険性が高い(小・中) ○ 主観的になりがち(小・中・高)
○ 客性がない(小・中)
児童生徒の相互評価 ○ よさを認め合い励まし合い,学ぶ(小・中・高) ○ 客観性が増す(高)
○ 観察眼が磨かれていく(高)
○ 協力する気持ちがわく(中)
○ 判断規準があいまい,主観的になりがち (小・中) ○ 友人関係に左右される(小・中・高)
○ 相手に遠慮して本音を書かない(高)