研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -041/117page

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方法を,巻末のアンケートにあるように具体的な評価方法で提示した。調査結果は下記のとおりである。

〔設問21〕あなたが情意面の評価を実際に行う場面でよく使用する評価の手だてはどのようなものですか。(複数回答)
〔設問22〕21の各評価の手だての中で,あなたが今後重点的に取り入れてみたい評価の手だてがありましたらその番号をお書きください。(複数回答)

 評価の手だて
順位 よく使用している評価の手だて 回答数 今後取り入れたい評価の手だて 回答数
1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

授業中の観察による評価

発言・発表

ノート

児童生徒の自己評価力一ド

作品

チェックりスト

作文法

レポート

実技テスト

児童生徒の相互評価カード

質問紙法

評定尺度法

241

196

147

121

84

82

66

48

27

35

26

7

児童生徒の自己評価カード

児童生徒の相互評価カード

発言・発表

チェックリスト

授業中の観察による評価

レポート

ノート

作文法

評定尺度法

質問紙法

作品

実技テスト

114

69

47

43

33

29

24

18

18

12

11

9

 ア 評価をする際に使用する手だて

 よく使用している評価の手だてとしては「授業中の観察による評価」「発言・発表」「ノート」「児童生徒の自己評価カード」の順に選択されている。 このことから授業においては,情意面の評価は「教師による児童生徒の観察」を中心に進められていることがうかがわれる。

 「児童生徒の自己評価カード」は現在4割近くの教師がよく使用していると答えている。これは,〔設問16〕の結果からも分かるように自己評価の長所と教師からの評価の短所についての記載が多く見られたことにも関係していると考えられる。つまり,自己評価の重要性とそれの手だてとして自己評価カードの有効性を感じているからではないかと思われる。

 イ 今後重点的に取り入れてみたい評価の手だて

 全体的傾向としては,特に「児童生徒の自己評価カード」を取り入れてみたいという回答が多く見られた。次いで「児童生徒の相互評価カード」に関心があり,取り入れたいという回答が多かった。

4 まとめ

 教育評価全般と情意面(関心・意欲・態度)の評価について,アンケートの項目ごとの分析結果を総合的に考察し,併せて今後の研究の課題を提示して本調査のまとめとしたい。
 教育評価全般及び情意面の評価の目的についての回答を見ると「個に応じた指導をするため」「児童生徒の個性や特性を発見するため」と多くの教師がとらえていたことは,注目に値することである。これは,評価の機能を「児童生徒一人一人を全体的に把握し,生かし,伸ばす」こととしてとらえ,指導と評価の一体化にそった方向で評価を活用しようとしているものと思われる。また,評価を単元や1単位時間の指導の中に計画的に取り入れようとする必要意識も高いことが,明らかになった。

 しかし,情意面の評価の実践状況について見ると,必ずしも十分に実施されているといえず,「客観性に乏しい」「学習内容に合った評価方法の選択が難しい」「校内の統一的規準設定が難しい」等の問題点の解消に苦慮している様子が見られた。

 一方,このような問題を抱えながらも,例えば,情意面の評価の客観性については「方法によっては客観的に評価できる」とする回答も見られ,その客観性を高めようとする工夫も試みられてきている。また,情意面の評価を数量化し評定に組み込む工夫や情意面の評価規準を明確に設定する努力などもうかがわれた。更に,今後情意面の評価をする場合に「児童生徒の自己評価」や「自己評価と他の評価の組み合わせ」を重視していきたいとする回答が多く見られ,情意面の評価の今後の方向性を示しているのではないかと思われる。

 以上の考察とともに,これからの新しい学力観に基づいた学習指導において,情意面の評価が更に重視されていくと考えられることをふまえれば,次の3点が今後の研究の課題となるものと考えられる。

(1) 自己評価を中心とした情意面の評価の具体的な手だての工夫
(2) 情意面の評価観点とその規準設定の工夫
(3) 情意面の評価の客観性を高める工夫


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