研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -042/117page

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III 試行仮説による小学校社会科における実践

 「評価に関するアンケート調査」と並行して,「試行仮説」に基づく授業を,小学校社会科で実践した。「試行仮説」としたのは,研究仮説設定のための予備的研究として実施したからである。

1 社会科における学習活動と評価

 小学校社会科において,「一人一人の個性を生かす評価の在り方」は,学習指導要領に示された新しい学力観と小学校児童指導要録に示された評価の観点を基礎として考えることができる。

 学習指導要領に示された新しい学力観は,「自ら学ぶ意欲や社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」のために,学力の認知面同様関心・意欲・態度の情意面をも重視し,思考力・判断力に加えて表現力にも重きをおいている。また, 小学校児童指導要録での評価の観点は,「社会的事象への関心・意欲・態度」「社会的な思考・判断」「観察・資料活用の技能・表現」「社会的事象についての知識・理解」の順に,児童が学ぶ学習のプロセスにそって並べ変えられた。このことは,学力の獲得のために学習のプロセスにそって「関心・意欲・態度」「思考力・判断力,表現力」などの育成に努める必要があることを意味している。そしてその際,評価は,児童自身の自己評価を中心に学習のプロセスのなかに組み込んでいくことが適切であると考えられる。

 また,自己を見つめ高める働きとしての自己評価を中心に,それを確かめる働きとしての相互評価,援助する働きとしての教師からの評価などを単元の中に評価機会として設定していくことが必要であると思われる。それによって,児童はそれぞれの課題を明確にし,課題解決への関心・意欲・態度を高め,また資料の読み取りや体験学習を通して,思考力・判断力, 表現力を高めていくものと考えられるのである。

2 試行仮説

 試行仮説を次のように設定した。

 単元の中に,自己評価を中心に相互評価,教師からの評価を組み合わせ,学習活動のまとまりごとに評価の手だてを工夫すれば,関心・意欲が喚起され,思考力・判断力や表現力が高まるであろう。

 これは,児童一人一人の学習意欲を大切にし,思考力・判断力, 表現力などの能力の育成を重視した新しい学力観と,自らの「よさ」に気付き,高めようとする児童の主体的な自己評価を基軸とする評価観に基づいて設定したものである。

 なお,小学校社会科における「知識・理解」は,思考力・判断力と密接に結びついて相互に関連し合いながら,高められ表現されていくものと考える。

3 実践構想

 (1)授業構想
 新しい学力故に基づいて設定した試行仮説を検証するために,次のような観点から授業を構想した。

1) 児童一人一人が課題意識を持って取り組む授 業

 児童一人一人に主体的に学習に取り組ませるために,問題解決的な学習の方法で授業を構成した。特に,単元の中の「導入」段階の工夫によって単元全体に関心・意欲を持たせ,社会的事象の意味や背景を考え,調べ,発表させる学習活動を中心に授業を構成した。それによって,児童一人一人の課題意識が明確化され,新たな意欲が喚起されると考えた。

2) 体験学習を取り入れた授業
 児童一人一人に学習問題解決への意欲を喚起さ


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