研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -043/117page
せるために,身近な地域素材を生かして観察,調査・見学などの体験学習を取り入れた。特に,身近な地域素材を生かした調査・見学などの体験学習は,児童の課題意識を引き出しやすく学習意欲を高めるために有効であると考えた。
3)児童一人一人が十分活動できる授業
児童が問題にじっくりと取り組み,課題意識の流れにそって学習するためには,授業時間の設定について可能な範囲で柔軟な扱い方をしていく必要がある。具体的には,調べ学習や見学・調査に対して,ある程度まとまって連続して学べる時間を保障した。とりわけ地域素材を生かした授業の場合は,独自の教材や資料が豊富に準備されるため,児童が学習課題を見いだす糸口も多いものと考えた。4)表現活動を重視した授業
自分の考えを明確に表現する能力は,今最も求められているものの一つであり,学習活動の中に児童が学んだことを文章や絵で表す表現活動の場を設定した。これは,学習に対する充実感や達成感を味わわせる上でも重要なことと考えた。(2)評価構想
新しい学力観に基づく授業を展開するためには,その学力観に対応した評価が求められる。そこで,次のような評価構想を立て,実践したいと考えた。1)単元全体を通した評価
社会科の学習はそのプロセスにおいて,学習のまとまりごとに「課題設定」「調べ学習」「まとめ」などの特徴があり,それぞれの段階に応じて「関心・意欲・態度」「思考力・判断力」「表現力」のなかから枚点を絞って重点的に評価することが効果的であると考えた。また,指導と評価の一体化の視点から,教師が評価結果を1学位時間の中でフイードバックするものと,次時以降にフイードバックするものとを考えた。
2)自己評価を中心とする評価
新しい学力観に基づく学習指導は,児童をより主体的に活動させることを重視することであり,それに対応する学習の評価は自己評価を中心にすることであると考えた。なぜなら,自己評価においては自己を見っめ,理解し,高め,自己実現に向かう心の働きが端的に表れるからである。その意味では,学習終了後,ある期間をおいて児童が自分の心の様子を振り返ること(回想的評価)も大切であると考えた。3)相互評価
相互評価には,他者を見る目を育てる側面と他者からのまなざしを基に自己を見つめ直す側面があり,自己実現を図るうえでも重要な横能を持つものである。児童が互いに友人の「よさ」「すばらしさ」を発見し,認め合い,互いに高めあっていくために有効であると考えた。4)教師からの評価
教師は,様々な場面で児童の学習活動の様子を評価し,指導に生かしている。ここでは評価の具体的な手だてとして,表情などの観察,発言・作品分析.学習ノート,「ふりかえりカード」分析などを組み合わせ,児童の「よさ」や「すばらしさ」を総合的にとらえようとした。また,「よさ」や「すばらしさ」を児童一人一人に伝えることは,一人一人を認めることであり学習への意欲付けにもつながることであると考えた。
5)自己評価,相互評価,教師からの評価の関連
評価の中心になるものは,児童本人が自己を見つめ,理解し,高めようとする自己評価である。また,友達との相互評価で自らの「よさ」を確かめ認め合う。更に教師からの評価で,児童は自らの「よさ」について適切な評価と援助を受ける。これらが相互に関連し合い繰り返し行われていくなかで,児童は自己理解を深め,意欲を高めて,自己実現に向かうものと考えられる。