研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -044/117page
4 実践計画
(1) 授業計画
このような授業構想,評価構想に基づき,「明治の世の中・掛田」の単元を設定し,霊山町立掛田小学校を協力校として検証授業計画を立てた。(6年1組 33名)1) 単元設定の理由
本単元は,明治維新を契機として,欧米の文化を取り入れつつ我が国の近代化が進められたことを理解させるとともに,当時の自分たちの地域の様子に目を向けさせることによって我が国の歴史や先人の働きについての関心を深めさせ,主体的に学習する態度を育てていくことをねらいとしている。ここでは,大久保利通らを中心とした廃藩置県などの諸改革や文明開化により,政治や社会の仕組み,人々の生活が大きく変わったことを学習することを適して,我が国の近代化の過程を理解させたい。また,幕末から明治初期にかけて生糸と茶は二大輸出品であり, 特に,生糸は原料,技術のすべてが国内で自給でき,明治の国際収支に決定的な役割を果たした。そのような中において,幕末から明治初期にかけての掛田は第1回の横浜に続き明治14年に第2回の全国蚕糸業共進会を開き,国の内外から注目された。また,「掛田養蚕伝習所」という養蚕の学校がつくられ日本各地から生徒が集まるなど,日本有数の生糸の産地であった。自分たちの地域を学習することを通して,地域や地域社会は歴史的に変化していくことをとらえさせることは意味のあることである。
なかでも,明治政府の殖産興業政策と結び付いた「掛田の生糸」の学習は,明治の世の中の様子の理解を深める上で価値ある教材であると考え,「明治の世の中」の単元と地域教材である「掛田の生糸」を合わせて「明治の世の中・掛田」の単元を設定し,これを15時間で構成した。
2) 単元目標
単元目標は次のとおりである。ア 我が国の近代国家形成の過程や幕末, 明治期における掛田の生糸の生産や地域の人々の生活に興味をもち,意欲的に調べることができるようにする。
イ 様々な資料から明治初期の主な社会的事象やその背景をとらえるとともに,日本の輸出産業における当時の掛田の役割や生糸の生産に携わった人々の心情について考えることができるようにする。
ウ 年表, 写真, 文章資料,聞き取り調査などから読み取ったことを自分の言葉でまとめたり, 歴史新聞に表現したりすることができるようにする。
エ 大久保利通らを中心にして,日本が近代国家としての形態や組織を整えていったこと, 掛田は明治初期旧本の生糸の有数の生産地であったこと, 明治政府の殖産興業政策と明治斯の掛田の生糸の生産が関連していることをとらえることができるようにする。
3) 単元構成の工夫
「明治の世の中・掛田」の単元を構成する上で工夫したことは次の点である。ア 地域素材の教材化
地域教材を取り入れた学習は,児童にとっては学習の対象や内容が身近なものであるため,興味・関心の高まりが期待でき,体験的な活動も容易にできる。本小単元の「掛田と生糸」は,調べ活動や見学学習を取り入れ,じっくり追究することにより明治の世の中の様子に対する関心を高め,自分たちの地域に対する認識を深めるための教材として高い価値があると考える。また,自分たちの地域を振り返り,地域の様子や先人の努力や苦労を理解することにより,先人に対する畏敬の念や地域に対する愛着心が育まれることを期待して「掛田の生糸」を9時間で設定した。
イ 連続した授業時間の設定
児童の関心・意欲の持続と学習活動の効率を考