研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -050/117page
歴史新聞を作る作業順序を説明してから一人一人歴史新聞作りに取り組ませた。
授業として予定した1時間だけでは,完成させることはできなかったので,残りは放課後等の時間を活用しながら,B4版大の用紙に完成させ,歴史新聞集にして一人一人に配った。「掛田の生糸」のまとめとして,歴史新聞をもとに,数人の児童に,中心記事,上手にできたと思うところ,掛田についての感想などを発表させた。
また,スライドで資料を提示しながら,明治のころの掛田の様子や明治政府の政策,特に殖産興業政策と掛田の生糸が深く結び付いていることをまとめ,単元の学習を終了した。(2) 授業の分析と考察
1) 単元構成
「明治の世の中・掛田」の単元構成について,次の2点から分析した。ア 教科書教材と地域教材の組み合わせ
「明治の世の中」の単元と地域教材である「掛田の生糸」を組み合わせて,「明治の世の中・掛田」という単元を設定し,15時間で構成した。
教科書教材と地域教材を組み合わせることによって,明治の殖産興業政策の一つとして掛田の生糸の生産の発展があったことや,学制公布を受けて明治6年に三乗院を借りて掛田小学校が開校したことなど,身近な教材によって教科書教材の内容を具体化することができたと考える。地域教材は,体験的な活動を取り入れやすく,児童の興味・関心の高まりも期待できるものである。明治の掛田について調べた後,見学学習を実施したが,この見学学習を契機として,放課後安田利作氏や大橋イシさんを再度訪ね,昔の様子や疑問に思ったことを尋ねたり,佐藤友信の墓にもう一度行き,佐藤家歴代の当主の名前を書き写したりした児童が多く見られた。見学学習には含めなかった三乗院の安田利作の墓や蚕を育てる稚蚕共同飼育所などを訪れた児童も含めると17名の児童が自主的に調査学習を行っていた。また,近所の養蚕農家を見学したり,家族と掛田の昔の様子について話し合いをする姿も見られた。
このことは地域に関する関心・意欲を高めるとともに,明治の世の中を理解する上で効果があったものと考えられる。
イ 活動が連続する時間設定の工夫
本研究においては,関心・意欲の持続と学習活動の効率を考えて45ページの「明治の世の中・掛田」の指導計画で示したように段階ごとに連続した時間を設定した。「明治の世の中」の導入は,この単元全体の導入でもあり,単元全体に対する興味・関心を高めるために2時間連続してあてた。このことにより東アジアにおける欧米列強の動きやヨーロッパの様子にとどまらず,明治の指導者達が持っていた危機意識を感じ取り,共感的理解にまで深めることができた。「まとめ」の段階も2時間連続して設定し,明治政府の政策の内容や意味について考えさせるために1時間あて,これをもとに明治政府の目指した国家像を話し合わせる時間をもう1時間取った。そのため,児童は明治という時代の国家像をイメージし,自分の言葉でまとめることができたのである。
また,「調べ学習」を2時間ずつ,「見学学習」を4時間連続して設定したことも,ゆとりを持った学習を可能にし,友達と協力して調べたり,見学場所で質問したりするなど,追究意欲が途切れず,学習効果を高めることができたと考えられる。
2 評価の手だて
ア 自己評価
自己評価のための手だてである「ふりかえりカード」を通して,思考力・判断九 表現力の高まりを分析した。
(ア) 「ふりかえりカード」に見られる児童の関心・意欲・態度
学習への取り組みを「ふりかえりカード」に記入することによって,自分の課題を明確にすることができた。例えば,導入で学習課題を設定し,