研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -051/117page

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視点を明確にした後「ふりかえりカード1」で次の時間に調べてみたいテーマを書かせた。その結果は,下表のとおりであった。

日本の変わり方 7名
西南戦争 7名
文明開化 5名
自由民権運動 5名
富国強兵 3名
四民平等 2名
廃藩置県 2名

(欠席2名)

 そして,次の調べ学習の「ふりかえりカード2」では,全員が上記の調べたい内容について「一生懸命調べた」と答えていた。これは自己評価カードを用いたことで調べてみたいことが自分の中で明確になったことが一つの要因となっているものと思われる。

 また,「ふりかえりカード1」では「よく分かった」とする児童が21名であったが,「ふりかえりカード3」では28名の児童が明治政府の国づくりを理解したと自分で評価していた。このことは,学習の深まりもあるが,自分で調べたいことを自覚して学習に取り組んだことが大きな要因となっていると考えられる。

 (イ) 「ふりかえりカード」にみられる思考力・判断力
 学習のプロセスの中での思考力・判断力の深まりについては,「明治の世の中」のまとめの後の「ふりかえりカード3」における印象深い人物への手紙や「ふりかえりカード6」の掛田の学習の感想などからとらえた。それらを見ると歴史的事実とその背景を理解し,相手の立場で考えたり,自分なりの考えを表現できるようになってきたりしていることが分かった。例えば,「ふりかえりカード3」で,「明治の世の中」の学習を通しての印象深い人物については,次のような結果が得られた。

大久保利通 10名
伊藤博文 6名
福沢諭吉 5名
西郷隆盛 5名
板垣退助 5名

(欠席2名)

大久保利通に対しては「まだまだやることがあったのに,暗殺されてしまってとても残念でしょうね」,伊藤博文に対しては「ドイツまで行って憲法の研究をしてくるなんて,本当に日本をよくしようと思っていたんですね」などの手紙があり,少しずつ相手の立場でものごとを考えることができるようになってきた。また,「掛田の生糸」の学習の後の「ふりかえりカード6」では,「安田利作さんのおかげで日本の掛田と言われるはどになったのだと思います。利作さんの作った掛田折り返し糸は,当時の掛田に欠かせないものだったんだなと思いました」などの感想が多く見られ,当時の掛田についての認識を深めていったことが分かった。

 これらのことを,中位の抽出児として観察したS子の学習のプロセスを中心に追ってみたい。52ページに示したのはS子の「ふりかえりカード3」と「ふりかえりカード6」である。

 S子は,「ふりかえりカード1」において「文明開化」について調べたいと考え,「ふりかえりカード2」では.資料集の「文明開化」の資料に興味を持ったと答えた。「掛田の生糸」においても,「ふりかえりカード5」で見学学習で一番印象が深かったことも昔の生活の様子を子どものころの学校の様子も含めて話してくれた「大橋イシさん」と答えている。また,同じ「「ふりかえりカード5」で「昔の子どものこと」を歴史新聞にまとめたいとし,大橋イシさんを再度訪ね,インタビューした内容を歴史新聞に「昔話コーナー」として載せた。更に,「ふりかえりカード6」では,現在掛田に住んでいることを「うれしく思う。


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