研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -053/117page

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 このように,調べ活動や見学学習を取り入れ,表現活動を重視した指導を積み上げることによって,表現力も高まっていくものと考えるのである。

 (エ) 「ふりかえりカード7」による回想的評価

 単元終了2カ月後に,「ふりかえりカード7」によって回想的評価を行った。ある程度の期間をおいた後で行うことで,その記述の内容はそれぞれの児童なりに整理され意識化されたものになると考えたからである。また,児童に本単元の学習の印象を確認させるとともに,自分たちの地域への理解や愛着の深まりを振り返ることができ,今後の歴史学習への意欲付けを図ることになると考えた。更に教師にとっては,児童にとっての本学元の学習の意味や,思考力・判断力,表現力の深まりを評価する手だてにもなると考えた。

 実際にカードの中の「明治の世の中・掛田の勉強について今思っていること」の自由記述欄の記載内容を見ると,学習の楽しさや地域に対する思いなどを全員が記入していた。次は,M子の「ふりかえりカード7」の一部である。

(M子の感想)
(M子の感想)

 全体的にみると,「掛田の町の歴史のすばらしさ」,「昔の人々の生活の様子について」,「友達の意見を聞いたり,資料を見たり,実際に見学して調べたりすることの楽しさ」についての記述が多かった。学習から2カ月経過したにもかかわらず,それらは予想以上に具体的に詳しく述べられていた。
 これらのことから,今回の学習は児童に地域の歴史に対する強い関心を引き起こし,理解を深めた授業であったことが確認できた。

 イ 相互評価
 (ア) 「ふりかえりカード」にみる友達の「よさ」
 「ふりかえりカード3」と「ふりかえりカード4」に,友達の考えでおもしろいと思ったものと友達の「よさ」について振り返る項目を設定した。
「明治の世の中」のまとめの後の「ふりかえりカード3」では,友達の考えでおもしろいと思ったものの記述が少なかったが,掛田の調べ学習の後の「ふりかえりカード4」では,全員が協力して調べたと答えていた。そして,「すぐとりかかる」「調べるのが早い」「教えてくれた」「上手にまとめている」など,調べ学習を通して気付いた友達の「よさ」について28名が記述していた。

(イ) 「贈る言葉」にみる友達のよさ
 単元終了時に,この単元を通して再認識した隣の座席の友達のよいところをカードに書き,交換させた。「贈る言葉」の内容については下表のとおりであった。

まとめ方や表現がじょうずなこと 20 名
調べ活動の時教えてもらったこと  9 名
新聞づくりなど一生懸命なこと  2 名
やさしい人であること  1 名

(欠席1名)

 単元を通して気付いた友達の「よさ」なので,児童は,すぐ書き終えて隣の友達に渡していた。E子は,調べ活動や歴史新聞づくりを通して気付いた隣の座席のY子の「よさ」を次のページのように伝えていた。

 カードを交換し合う児童の様子からは,友達の「よさ」を発見し,伝えることによってお互いの「よさ」を認め合うことができたことがうかがえた。また,互いの「よさ」を相手に伝え,高め合うための手だてとしての「贈る言葉」を自然な雰囲気の中で実施することができたことも効果があったものと思われる。このような相互評価を積み重ねることによって,児童は他者を見る目を育てながら自己を見っめ直す態度を身に付けていくものと考える。


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