研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -055/117page
授業の内容に合わせて,観点を絞って観察や作品分析をしたことは,フィードバックに生かすうえで効果的だった。
学習のまとまりごとの評価の観点と評価結果
(「学習の記録」より)
作品分析として,歴史新聞を「構成の工夫」「正確・独自の内容」「ていねいさ」「感想」の4つの視点から3段階で評価したのが,次の表である。
歴史新聞の分析の視点と評価結果
視 点 規 準 と 人 数 構成の工夫 A B
C
(分かりやすい) (普通)
(分かりにくい)
15名 14名
3名
正 確 ・
独自の内容A B
C
(正確・独自の内容) (正確・普通の内容)
(不正確)
14名 18名
3名
ていねいさ A B
C
(ていねい) (普通)
(ていねいでない)
6名 21名
5名
感 想 A B
C
(自分との関連) (事実のみ)
(記述なし)
14名 18名
0名
このうち,「構成の工夫」と「感想」を見ると,「ふりかえりカード6」の自己評価と教師の評価ははぼ一致した。
次の歴史新聞の一部はA男のものである。「構成の工夫」の視点で見ると,養蚕農家の仕事や生糸について絵で表す工夫が見られ,本人も「絵でうまくまとめることができた」と「ふりかえりカード6」で評価していたものである。(イ) 「メッセージカード」にみる教師の評価
単元を通して教師の観察,発言・作品分析,「ふりかえりカード」などから総合的にとらえたその子の「よさ」を,「メッセージカード」と名付けた吹きだしカードに書いて,一人一人に渡した。「学習の記録」などから総合的に診断し,とらえることによって,教師は一人一人の児童の「よさ」を的確に伝えようと努めた。上の「メッセージカード」はB男に対するものである。今まで落ち着いて学習することの少なかったB男が,調べ活動や歴史新聞づくりに集中して取り組んだ。教師はこの「よさ」をB男に「メッセージカード」で伝えたが,その時のB男のうれしそうな表情からも,この手だては効果があったと思われる。