研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -057/117page
6 社会科における実践のまとめ
児童の関心・意欲が高まる教材を準備し,どのような評価の在り方が児童の「よさ」を伸ばす上で有効なのかを明らかにするため,本研究に取り組んだ。そのため,教科書教材と地域教材を組み合わせた畢元構成や,単元を通した評価計画に基づく,学習のまとまりごとの評価の具体的な在り方について検証してきた。
地域教材を取り入れたことにより,児童の興味・朗心を高めることができた。また,一方では地域教材を取り扱う時間設定において,年間指導計画の調整などの点で工夫が必要であった。
評価についてみると,自己評価を中心とした「ふりかえりカード」によって学習を振り返らせ,課題や興味・朗心を明確に自覚させることにより,次の学習の執心・意欲が喚起され,それに伴って思考力・判断力や表現力も高まっていくことが確かめられた。また,相互評価によりお互いの「よさ」を確認させることができた。そして,教師は様々な観点から総合的にとらえた一人一人の「よさ」を「メッセージカード」で伝えることにより,自分の「よさ」に気付き,伸ばしていこうとする意欲を援助することができた。更に,単元全体を通した評価計画により,観点を絞り,児童一人一人に応じた指導の工夫を図ることができた。
自己評価を中心に,相互評一札 教師からの評価を組み合わせることで,児童が自己を見つめ,互いに認め合うことで「よさ」を自覚し,更に伸ばそうとする意欲を育てることができた。
今後,自己評価を具体的に取り入れるための方法として,「カード」以外ではどのような手だてが有効なのか,過重になりがちな教師からの評価の必要かっ十分な内容や手だてをさぐっていかなければならないと考える。
【授業者の感想】
霊山町立掛田小学校教諭
野木 勝弘
研究協力者としての感想を述べたいと思います。
この研究は,学習内容の重点化を図り,学習活動の多様化と児童の個性を生かす評価の在り方を追究していくものでした。多くの面で示唆に富む研究であったと思います。特に,地域素材の教材化と評価活動への配慮が本研究のポイントだったと思います。
地域素材は児童の興味・関心を引きつけ,主体的活動が可能と一般的には言われていますが,それ以上の成果があがりました。地域の歴史の学習を進めていくにつれて,児童はふるさとのよさを再発見し,心に郷土愛を芽生えさせました。更に,先人の生き方に触れたり,文化財に接したりすることを通して,地域の伝統を大切にしようとする態度を培いました。また,児童が家族や地域のお年寄りに取材することによって,養った世代同士が共通の価値認識を持っことができました。これらのことは社会科の目標として掲げられながら,今まで私の実践ではなかなか到達できないことでした。
「ふりかえりカード」においては,関心・意欲・態度面や思考力・判断九 表現力に重点を置き,児童の内面を知るための問いかけや方法が吟味されていたと思います。
児童の明治時代の政策や人物に関する知識は不安定な部分もあります。でも,今回の実践は児童の心にズシンと感じさせるものが多くありました。それが今後の生き方の指針となったり,次の世代へと語り継がれたりすることでしょう。
研究協力として始まった実践でしたが,児童に,学校に,地域に大きなものを残していただいたと思います。