研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -058/117page

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IV 本年度の研究のまとめ

 本年度の研究について,「評価に関するアンケート調査」と「試行仮説による小学校社会科における実践」についてまとめたい。

1 評価に関するアンケート調査

 この調査では,情意面(関心・意欲・態度)の評価に焦点をあてて実施した。

 その結果,情意面の評価の必要意識は高いが,実践状況においては必ずしも十分とは言えず,主観的になりがちである」「評価規準の設定が難しい」などの悩みも多くうかがわれた。しかし,その一方,評価の客観牲を高めようという工夫や評価規準を明確に設定しようという努力もなされていることが分かった。

 調査結果は今後の研究を進める上で基礎的な資料となるものであるが,明らかになった評価研究実践上の課題は次のようなものである。

 (1) 自己評価を中心とした情意面の評価の具体的な工夫
 (2) 情意面の評価の観点とその規準設定の工夫
 (3) 情意面の評価の客観性を高める工夫

2 試行仮説による小学校社会科における実践

 この試行的検証授業では,単元の中に,自己評価を中心に,相互評価,教師からの評価を組み合せ,学習活動のまとまりごとに評価横会を設定し,関心・意欲や思考力・判断力,表現力の高まりをとらえることをねらった。

 その結果,次のような成果が得られた。
 (1) 単元の中で,学習のまとまりごとに評価の観点を絞って評価機会を設定することは,フィードパックの場面をより明確なものとした。

 (2) 自己評価の「ふりかえりカード」は,児童が自己を見つめ高めていく上で有効であり,関心・意欲・態度と思考力・判断力の深まりを確認できた。

 (3) 児童の相互評価を「贈る言葉」として交換させたことは.互いの存在と「よさ」を認め合わせる上で効果的だった。

 (4) 教師からの評価において総合的に診断した評価結果を「メッセージカード」で伝えたことは,児童の自己理解を深め,援助することにおいて効果的だった。

 今後の研究の課題としては,自己評価についてカード以外の方法も工夫する必要があること,ともすれば過重になりがちな教師からの評価の必要かつ十分な内容や手だてを明らかにすることなどがあげられる。

 最後に,本研究を進めるに当たってアンケートにご協力いただいた先生方,そして研究協力校の先生方に感謝の意を表する次第である。

<参考文献>

 ・小学校指導書 社会編:文部省

 ・絶対評価の考え方:奥田真丈他 著(小学館)

 ・社会科評価の理論と方法:中野重人著(明治図書)

 ・新・教育評価法総説上下:橋本重治者(金子書房)

 ・自己評価:安彦忠彦者(図書文化)

<研究協力校及び協力委員>

霊山町立掛田小学校
福本 光雄 野木 勝弘

<プロジェクト研究メンバー>
佐藤 英昭 星  和久 辺見 広一 赤塚 公生
高羽 博樹 遠藤  光 佐藤 吉則 高根 勇次
荒井 一成 大友  誠 白岩 二朗 鈴木  昭
寺木 誠伸 菅野 哲哉    


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