研究紀要第92号 「児童生徒の創造性を高めるための教材開発 第1年次」 -064/117page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

V 小学校理科

1 はじめに

 新学習指導要領・小学校理科の目標では,「観察,実験などの直接経験の重視」「問題解決能力の育成」「自然についての科学的な見方や考え方の養成」が特に重視された。

 この中で「問題解決能力の育成」や「自然についての科学的な見方や考え方の養成」は,他の事象や新しい事象に対応できる能力の育成を目指したもので,これは児童がこれからの社会の変化に対応しながら主体的,個性的に生きていくために必要な能力の一つである創造性の基礎を培うことを目指したものと考えることができる。

 一方直接経験などの体験的な活動は,主体的,能動的な活動を含みいろいろな情報を得ることができるので,複雑な要素の格み合った奥の深い自然について学習する理科においては基本的な学習活動である。自然離れがいわれている今の児童にとって特に必要な学習活動でもある。さらに体験的な活動は,意欲・関心を高めたり,科学的な見方や考え方を身に付けさせたりするためにも有効な方法である。

 また,新しい学習指導要領は実施されたばかりなので,1)新しく出てきた指導内容,2)履修学年が変った指導内容,3)取り扱いが変った指導内容,(以下新指導内容という)に関する教材・教具の充実が特に望まれている。

 以上のことから,新指導内容について,体験的な活動を重視した,創造性を高めるための教材開発に取り組んだ。

2 教材開発について

(1)体験的な活動の考え方

 本研究では,体験的な活動を観察,実験,飼育,栽培,製作などの直接経験を意味するものとしてとらえた。しかし,「人の体のつくり」や「天体」のように,直接経験ができないか,それが難しい単元もある。このような場合には,モデルや代替吻,映像による経験なども研究の対象にした。また,児童に直接経験をさせるために必要な資料(例えば地域内の観察適地に関する資料)の提供も本研究の目的に合致するものと考え,教材開発の対象にした。

(2) 教材開発の方針

 教材開発に当たっては,研究主題に沿い,かつどの学校でも活用できる教材をつくることを課題とし,各学校へのアンケートの結果を参考にした。教材は,独自に開発したものの他に下記のようなものも取り上げた。

○ 他の校種で使われているものでも.単元の目標を達成するのに有効と思われるものを小学校に当てはまるように工夫,改良したもの

○ 市販の教材や教科書等に載っている教材を身近な素材で安価に自作するなどの工夫,改良したもの

○ 教科書等に載っている教材を,観点を変えたり,よりわかりやすい方法で実施できるようにするなどの工夫,改良したもの

3 アンケート調査について(資料P84〜P86)

 新指導内容に関する教材について各学校の実態と要望を知るために,「指導しにくい単元」や「あればよいと思われる教材」についてアンケート調査を実施した。

 調査は県内の小学校96校に対して行った。その結果,指導しにくい単元がA区分(生物とその環境の分野)とC区分(地球と宇宙の分野)に偏っていることがわかった。

 A区分では特に「発生と成長」に関する内容が多く,この新しい分野に対する指導上の不安が表れている。またこの分野は,その性質上ビデオ教材やモデルの希望が多いのも特徴である。

 B区分(物質とエネルギーの分野)では「光電池」の単元だけが特に指導が難しいとして挙げられたが,これは光電池が高価なため個別化が難しいことによる。

 C区分では「地域の自然の教材化」の困難さが多く指摘された。これに関連して,「あればよいと思われる教材」として,観察適地に関する資料の希望が多かった。これは野外観察を実践したい教員の実際の悩みが如実に表れたものと考えられ


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。