研究紀要第92号 「児童生徒の創造性を高めるための教材開発 第1年次」 -065/117page
る。
このアンケート調査にみられた,指導の難しい単元や要望の多い教材の中で本研究の趣旨に沿うものについて,できるだけそれを参考に教材の開発に取り組んだ。なおアンケート調査の結果と関連した教材の場合は,そのかかわりをねらいの中に明確にした。
4 開発教材の単元と教材一覧
新指導内容の中で,各学校からのアンケート調査の回答を参考に研究の対象とする単元を決定し,教材の開発に取り組んだ。以下に単元名と今年度開発した教材(現在開発中の教材も含む)を示す。
学年 大単元名 開発教材 A 区
分
3 草花を育てよう ○ 生育型観察カード さし木をしよう ○ 簡単なさし木法 人のからだをしらべよう ○ 骨と筋肉モデル チョウをそだてよう ・ フタホシコオロギの飼育とその活用 4 生き物の1日と人のからだ ・ ポーチュラカ類の開花運動の観察 5 動物と人のたんじょう ○ 胎児模型の製作法 6 人とかんきょう ・ インジゴカーミンを用いた酸素の検出法 ○ 土壌動物の観察
B 区
分
4 ものの重さとてんびん ・ 上皿てんびんづくり もののあたたまり方と体積 ○ 液体の温まり方観察箱の作成法 6 電磁石と発熱 ・ 豆電球を用いた電流による発熱量測定 C 区
分
5 気温と天気の変化 ○ 直読式標準時日時計 月と太陽 ・ 月・太陽用簡易ビデオ撮影システム 6 大地のつくり ・ 福島県内の火成岩及び火山灰層の分布とその教材化 ○ 堆積実験装置
5 開発した教材
A−1フタホシコオロギの飼育とその活用
1 単元名「チョウをそだてよう」(第3学年)小単元「バッタやカマキリはどうそだつか」
2 ねらい
この単元では,昆虫の飼育活動を通し,その育ち方には一定の順序があり,種類によって食べ物に違いがあることをとらえさせることをねらっている。しかし,県内に分布するバッタ,カマキリ,コオロギ類などは1世代が長く,卵−幼虫−成虫のすべてのステージ(特に産卵〜ふ化)を短い期間中に観察することは難しい。そのため育ち方に一定の順序があることについては,写真などの資料を使いながら学習を進めなければならない。
熱帯性のフタホシコオロギは1年間に4〜5回の発生を繰り返す。つまり,1世代が短いので,卵−幼虫−さなぎ−成虫のステージを限られた期間中に観察できるので,教材としての利用価値が高い。児童は1世代の最後まで飼育活動をする機会が与えられることによって,興味を持って意欲的に取り組むことができる。その結果,自主的,持続的な態度が身に付き,創造性の育成が図られると考えた。
3 教材の概要
(1) 特徴
フタホシコオロギは,奄美大島や沖縄,台湾,中国に生息する昆虫で,ペットショップなどで容易に手に入れることができる。また1世代が約2カ月と非常に短いため,産卵やふ化 脱皮などのようすを単元の学習期間内に観察できる。
(2) 飼育方法
市販されている金魚等の餌(コオロギの大きさに合わせて)と水をコーヒーびんのふた等に入れて別々に与えれば育つので,飼育は容易である。丸めた新聞紙などを入れておくと隠れ家となり,高密度で飼育できる。まとめて飼うときは,大型の水そうに乾いた土や砂を入れたものを使う。湿った土を入れた小さな容器を入れておくと,成虫の雌はそこに1日に約50〜100個産卵する。