研究紀要第92号 「児童生徒の創造性を高めるための教材開発 第1年次」 -077/117page

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VI 中学校技術・家庭科

1 はじめに

 技術・家庭科の目標は,生活に必要な基礎的な知識と技術の習得を適して,生活を工夫し創造する能力(創造力)と実践的な態度を育てることにある。また,生活そのものを学習の対象としている当教科の性格上 目標達成のためには体験的な活動が学習活動の中心となる。つまり,当教科は本研究でいう「体験的な活動を通して,創造的な能力と態度の育成を図る」ことを目指すものといえる。

 今回の改訂により,『家庭生活』領域が新設され,自分の家庭生活の問題点を明らかにし.主体的に対処できる能力を養うことが当教科の新たな課題となった。このことからも,本研究は意義あることといえる。

 以上のことから,本研究の構想に基づき,『家庭生活』領域において,体験的な活動を重視した創造牲を高める教材の開発に取り組んだ。

2 教材開発について

(1)『家庭生活』領域と体験的な活動について 本領域は,近年著しく変化している家庭の機能に対応するために,男女が共通に履修する領域として第1学年に位置付けられた。

 その指導内容は,衣,食,住,家族,家庭の経済,地域との関係と多岐にわたっており,いずれも体験的な活動を通して目標の達成を図ることになっている。

 本研究では体験的な活動を,素材を選択し加工して生活に役立っものを作り出す製作や実習,事実や生活現象を実際に確かめさせる実験,観察.調査,さらに家族裾係や家庭生活の意義などを理解させるためのロールプレイング等ととらえた。

 なお,当教科の特徴として,衣食住などに関する実践的な活動は,目標達成のための大切な方法であるが,ここでは体験的な活動に含むものとして研究を進める。

(2) 教材開発の方針

 教材開発に当たっては,次のようなものを取り上げることとし,それら教材は家庭生活に発展でき,実践に結び付くように配慮する。

○ 小学校家庭科の学習を基盤とし,基礎的・基 本的な内容を押さえたもので,当教科の学び方 の基本を習得できるもの。
○ 「計画一実践→反省・評価」の一連の体験的 な活動を通して,仕事の楽しさや完成の喜びを 体得できるもの。
○ 個に応じて創意工夫ができるもの。
○ 実態調査やデータ処理などの効率化によって, 体験的な活動の充実が図れるもの。
 なお,教材開発と並行して,体験的な活動を重視した指導計画の作成にも取り組む。

3 アンケート調査について(資料P87・88参照)
 『家庭生活』領域の研究を進めるに当たっては,家庭生活における生徒の実態と,平成5年度からの実施に向けて,担当教員の新設領域に対する意識等を把握しておく必要がある。そのため,アンケート調査を実施した。

 生徒については,福島市内の中学1年生250名を対象に行った。その結果,「家庭の仕事」では仕事の大切さは男女ともかなり認識している。しかし,手伝いの実態は女子に比べると男子が低く,特に料理作り,衣服の手入れ,部屋の掃除にその傾向が強く現れている。

 担当教員については,県内30校を対象とした。体験的な活動として取り入れたい内容は,「衣服の計画」では90%が調査活動「衣服の手入れ」では50%が洗濯やしみぬきの実習,「小物の製作」では59%が布を用いた題材等である。

 家庭生活領域を指導するに当たっての問題点としては,35時間という限られた時間内での体験的な活動の取り入れ方,生徒の興味・関心を高める教材の選択(例えば小物の製作の作品)などが挙げられた。また,指導内容の理解不足や指導方法への不安も多い。

 これらのことから,生活体験における男女差,生徒の興味・執心などの実態を十分に考慮し,教員が指導したい内容等を勘案した教材の閲発に取り組んだ。


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