平成5年度 研究紀要 Vol.23 -102/162page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(2)教材の有効性

 生徒一人一人に課題を設定させ、解決させる過程で、マルチメディアによる表現活動を取り入れることによって「普段ではあまり気づかない身近な環境に対して、生徒自らが目を向けるとともに、地球環境について様々な要因が複雑に絡み合っていることを、多くの資料を活用することで、総合的に理解させることができた」「環境間題に関心を持つばかりではなく、表現活動を通して、身近な環境の保全に取り組もうとする態度が育成された」など学習のねらいを達成することができた。

 これらの教材開発や学習活動を援助、指導していただいた研究協力者の先生は、以下のような感想を寄せている。

・この教材は、「地球環境は環境要因と人の営みなどが複雑に絡み合っていることや、環境問題に対して、まず自分たちの行動を見直そう」などを意識させるのに十分であった。

・開発した教材を学習した後も、興味・関心が持続し、課題解決や表現活動に対して、消極的な生徒も活発に取り組む姿が見られた。

V 考察

1 「開発の考え方と開発方法」について

 非階層構造におけるマルチメディア教材開発の考え方や方法は、今後研究が進み、教育現場に普及するものと考えられる。したがって、今回のように一つの教材を開発しただけで、開発の考え方や方法について結論付けることはできないが、開発を推進するための理論や方法として参考に資する方法であると考えている。また、生徒一人一人の興味・関心に応じて、自ら課題解決することができる非階層構造のマルチメディア教材の開発が可能であることが明らかになった。

2「マルチメディア教材の活用の在り方と教材の有効性」

  開発したマルチメディア教材により、生徒一人一人の興味・関心に応じ、主体的、能動的に学習させることができた。また、映像資料や文字資料などを統合し、リンクを生徒に任せることによって、複雑に絡み合っている事象を総合的に理解させることができた。

 表現活動においては、生徒がコンピュータに入力した情報を、開発したマルチメディア教材とリンクさせることによって、教材の内容が増え「生徒の考えによって成長する学習材」となり、今後の活用方法の研究に示唆を与えた意義は大きいと考えている。

VI まとめと今後の課題

 マルチメディア教材は、「今まで蓄積してきた、優れた教材や資料を同一メディアで統合し、有効に利用できる」「検索やリンクが生徒の任意であり、個に応じた学習ができる」などの点から、学習方法を大きく変えていくものと思われる。今回の開発を通して、開発時間などの問題点はあるものの、マルチメディア教材の「多様性や可能性」「生徒が情報の送り手としてのコンピュータの活用」等の点からも本研究の意義は大きかった。

 今後、「教育・学習方法の改善・充実」を目指して、開発した教材の評価を踏まえ、問題点を改善しながら、新たな教材の開発を進める一方、活用の在り方についてさらに研究を深めたい。

 最後に教材の開発、試行授業にご協力していただいた福島市立渡利中学校長阿部重信先生(現清水中学校長)同校教諭柳田健一先生、相馬郡飯舘村立飯舘中学校長佐藤茂夫先生、同校教諭馬場隆一先生に厚くお礼を申し上げます。

● 参考文献・資料

新教育メディア開発研究総合事業報告書:文部省 情報教育に関する手引き:文部省 環境教育指導資料(小学校編中学校・高等学校編):文部省 新しい科学:東京書籍 グラフィック理科資料集;新学社 改訂中学校教育課程講座「理科:(山極隆.江田稔)ぎょうせい メディアを生かす先生:(水越敏行図書文化社 コンピュータ教育のススメ:(芦葉浪久)アスキー出版 ハイパーメディアによる教材開発:財団法人 日本教材文化研究財団 学習指導と認知心理学:(E・Dガニエ,赤堀侃司,監訳) パーソナルメディア 教育工学実践研究109号:才能開発教育研究財 NEWTON別冊太陽系のすぺて:教育社 UTAN保存版地球環境白書9「驚異の科学シリーズ」 学研マッキントッシュハイパーカード「活用マニュアル」:成美堂出版 読売新聞平成4年5月22日〜27日;読売新聞社 宇宙から見た地球環境;宇宙開発事業団


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。